東日本大震災で8割の病院が被災

 東日本大震災医療機関に与えた影響が、第18回社会保障審議会医療部会資料(平成23年6月8日)の資料1 東日本大震災等に係る状況全体版(PDF:4870KB)に載っている。



東日本大震災における医療分野の特徴及び検討課題について<医療需給>
地震より津波の影響が大きく、阪神・淡路大震災と比較して、死亡者の割合が高く、負傷者の割合が低かった。
○ 避難所生活の長期化に伴い、慢性疾患患者への医療ニーズが多数発生した。
○ 元来、医師不足である地域が被災したことにより、医療需給の一層の逼迫が見られた。
→ 医療需給のギャップについては、今回はDMAT・医療関係団体等からの医師派遣により対応したが、今後の医師等の確保や医療機関間の連携が課題。<医療機関の置かれた状況>
地震津波による道路網の損傷とガソリン不足のため、職員の出勤、患者搬送、医薬品等の物資の搬送が困難となった。
○ 固定電話・携帯電話とも接続が非常に困難となり、通常の通信手段が途絶した。
○ 広範囲にわたりインフラが機能停止し、停電・断水等が発生した。
→ 今回の震災で災害拠点病院にも被害が発生したが、今後拠点となる医療機関等が有すべき機能が課題。


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○ 災害医療体制の一層の充実を図る観点から、災害医療のあり方について検討を行うための場を設ける。
平成23年中を目途に検討結果をとりまとめ予定。


 岩手、宮城、福島3県の病院380施設中、全壊11施設、一部損壊289施設あわせて300施設78.9%が被災した。沿岸部に限ると、ほぼ全ての医療機関が機能の全部ないし一部を失ってしまった。しかも、情報手段が失われ、各医療機関の現状がリアルタイムに把握できなかった。危機感を感じた医療機関が自主的に足を使って情報収集を行わざるをえなかった。災害拠点病院が自らも被災しながら目一杯救急患者を受けていれている現状を理解し、その機能を維持するために、後方病院としての役割を担う医療機関がオーバーベッドを覚悟で意識的に患者転院を受け入れた。このことにより、災害時の医療機能がなんとか維持された。もともとあった地域医療連携が緊急時の状況に応じて再構築された。
 一方、被害が大きかった地域で孤立してしまった病院(石巻市立病院など)は緊急サインを発することができないために、個別に頑張っているという誤った判断をされてしまった。
 東日本大震災規模の大災害時においては、医療機関も機能を失うという考えてみれば当たり前のことが今回明らかになった。大規模災害に耐えられるように医療施設の構造を強化すると同時に、いざという時のために情報伝達手段を確保することが必要となっている。地震大国日本において、大地震が起きると予想される地域は少なくない。東日本大震災の教訓をどう生かすかが課題となっている。