仮設住宅だけできても生活は困難

 不自由な避難所暮らしをしている方にとって、医・食・住のうち、住宅さえあれば安定した生活をおくることができると思っている新聞社がある。

■ここは3食出る


 宮城県大崎市鳴子温泉の宿泊施設に避難している南三陸町の佐々木とし江さん(79)は、4月29日に南三陸町内の仮設住宅に当選した。


 しかし、当選後の説明会で、仮設住宅からは病院への無料送迎車が出ないことや食事の配布がないことを知り、今も鳴子温泉に残っている。


 腰と肩とひざを痛め、ふくらはぎもむくみ、歩行補助車を使って歩くのがやっと。震災前は介護ヘルパーに買い物をしてもらっていたが、今はそれもない。「足腰もろくに立たないのに3食作れというのか」と、ベッドで体の痛みに顔をゆがませた。


 知的障害を抱えた孫の賢さん(26)と2人暮らし。町には6月中の移動を促されている。頼りにしていた兄は津波で流された。


 「どう食べて、通院すればいいのか。このまま移れば、仮設で死ぬだけだ」と訴える。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110605/dst11060511560005-n1.htm


 仮設住宅でどのように生活するのか説明されたら、生活に困難を抱える避難民は誰だって二の足を踏む。津波による壊滅的な被害のため、医(医療や介護)もなく、食も準備することもできない状況であることがあらためて思い知らされる。義援金も手元には十分届いていないという報道がされている。
 恵まれた環境だということを暗示しているかのように、温泉旅館の大広間に置かれた食事がわざわざ掲載されている。沿岸部から山沿いの地まで避難してきた住民を貶める意図を持って書かれた悪意に満ちた記事としか思えない。高齢者や障害者が安心して生活できるための環境調整が不十分なまま放置されていることの方を問題視すべきである。