松島の被害は軽微

 青森県八戸市から岩手県三陸海岸宮城県〜千葉県沿岸部に巨大津波が押し寄せ、大きな被害が生じた。その中で、日本三景松島の被害は他の地域と比べ、軽微なものにとどまっている。

 文化庁や松島町によると、島の一部が崩落したり、島と島とを結ぶ橋が壊れたり、大きな被害を受けた。一方、島々の対岸にある松島町の死者は、22日午後6時現在、1人にとどまっている。隣の東松島市の犠牲者は650人を超えた。住民は「島が津波から守ってくれた」と感謝、美しい景観を取り戻そうと、流れ着いたがれきの撤去に取り組み、再生に動き出している。


 島々をつなぐ橋は2本が全半壊し、海岸線沿いにある商店の1階が泥水につかった。しかし、津波で多くの住民が死亡・行方不明となっている他の三陸沿岸地域と比べると津波の被害は少ない。松島湾内に点在する島々が緩衝材となり、津波の勢いを弱めたためとみられ、松冨英夫・秋田大教授(水工学)は「津波の一部は島にあたって反射する。はね返った分、陸に押し寄せる波のエネルギーは弱まり、これまでの津波と同様、今回も津波による被害を減らしたと考えられる」と分析。商店街で酒店を営む佐々木繁さん(62)は「島が守ってくれた」と話す。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110323-OYT1T00077.htm?from=navr

 東北地方太平洋側にある数々の良港のうち、塩竈港も物流拠点として機能を回復した。ガソリンの供給不足も回復される見通しとなっている。漁業の再生も急ピッチで進んでいる。塩竈港も松島海岸と同じ湾の中にある。
 歴史上津波の被害が繰り返された三陸海岸の地形をみると、入り口が広く湾の中に来るほど狭くなるような構造となっている。一方、地図を見るとわかるが、松島湾は、桂島などの浦戸諸島が防波堤のような形で配置されている。荒浜や閖上のような決して複雑とは思えない海岸線に押し寄せた津波の惨状をみると、松島湾沿岸の被害は不思議に思える。
 東北地方の美しい海岸線が景観を取り戻すのにはかなりの時間がかかる。その中で、松島がほぼ無傷のまま残った。観光業の再生の希望といえる存在となっている。