大災害時の「機能分化と連携」

 千年に一度の大地震を経験して、大災害時の「機能分化と連携」について、気づいたことをまとめる。
 まず、大災害時には、ライフライン途絶、施設損傷、マンパワー問題などがあらゆる施設に一度に生じる。このため、災害拠点病院のみならず、病状が落ち着いた患者の対応をする回復期亜急性期医療機関介護施設、在宅サービスまでが一気に機能を低下させる。最初のうちは生き延びた施設が奮闘するが、力尽きてしまうと残され施設に過重負荷がかかり、疲弊する。一種の急性増悪型医療崩壊が生じる。
 ライフラインの機能低下、医療からの隔絶、介護サービス不足などが長期化すると、虚弱高齢者の健康状態、生活機能の悪化を招く。感染症の蔓延、持病の悪化、低栄養などが悪循環を引き起こす。
 被災地域の広域化、情報インフラの機能低下が、これらの問題を悪化させる。対策としては次のことが上げられる。
 最初に必要なのは、情報の集約化である。どこの施設が機能を停止し、どこが保たれているか、災害拠点病院、回復期亜急性期医療機関介護施設、在宅サービス、各レベルで確認する。
 その上で、残された施設に力を集中する。機能を失った病院からスタッフや医療材料、機器を移動させる。オーバーベッドをいとわない。特例措置として許容する。自家発電に用いる燃料類、地域巡りに使うガソリンや軽油も集中する。
 さらに、地域内で対応困難な課題に関しては、遠方への患者移動を行う。
 当院は、外来棟損傷という痛手を被ったが、幸いにもライフラインが回復し、病棟は保たれた。今回、リハビリテーション室の一部を居住スペースに転換し、他病院からの転院を受け入れることを、今日決定した。情報共有のための協議会開催を求め、地域の病院巡りや医師会役員訪問も行うことにした。大災害時の「機能分化と連携」に向けた取り組みが始まる。