非日常から日常へ

 震災後、初の平日だった。いつもと同じように、患者さんが外来に来た。体調を確認し、家の状況を聞き、「薬の在庫がないから、8日分だけね」と言って、お薬を出すということを繰り返した。避難所暮らしを続けている方が多かったが、不満ひとつ述べず、「診てもらっただけでもありがたい」とかえって感謝された。
 避難暮らしが長期化する中で、様々な問題が生じてきている。ケガをした方も今日まで我慢していたのか、多数来院した。避難所暮らしを続けている子供たちの間にインフルエンザが流行り始めている。認知症の高齢者の問題行動が悪化している。重症の肺炎患者が家族に連れられて来院し、人工呼吸器の可能性があり、救急病院に転送となった。
 知恵を出し、力を合わせ、できることを確実にやり遂げていくしかできない。今日は、検査機器の一部とX線機械が復旧した。エレベーターが使えるようになり、人海戦術で運んでいた給食を届けることが楽になった。
 失われたものはあまりに多く、先行きの不安も大きい。しかし、非日常的な光景を見慣れた日常的なものに戻すために、これからも歩み続けていくしかないと心に決めている。