無資格鍼治療死亡事件の判決

 柔道整復師の資格をもつ鍼灸整骨院副院長が、無資格で鍼治療を行い、患者を気胸で死亡させた事件の判決がおりた。

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 大阪府池田市の「メイプル鍼灸(しんきゅう)整骨院」で女性患者が無免許の施術者にはり治療を受けた直後に死亡した事件で、業務上過失致死罪などに問われた同院元副院長、岡村祐樹被告(27)に対し、大阪地裁(増田耕児裁判長)は7日、懲役3年、執行猶予5年、罰金50万円(求刑懲役3年、罰金50万円)の有罪判決を言い渡した。

はり治療後に死亡、元副院長に有罪判決 大阪地裁 :日本経済新聞


 本事件は鍼治療に伴う死亡事故であり、鍼灸関係者に衝撃をもって受け止められた。様々な情報を分析すると、ポイントは次のとおりになる。

  • 事件の舞台は、鍼灸整骨院であり、鍼灸を専門的に行う施設ではない。
  • 事件を起こしたのは、柔道整復師の資格を持ちながら、鍼灸専門学校に通っていた副院長である。
  • 被告は、無資格でありながら、鍼灸治療を行っていた。
  • 院長も、違法状態を黙認していた。


 無資格で鍼治療を行って死亡事故を起こしたにも関わらず、業務上過失致死罪というのは腑に落ちない。無免許医師が治療行為に関わる事故を起こした場合には、傷害罪に問われる。事件の性格からすると、本件も傷害致死罪の方が適切である。刑罰も軽く、さらに執行猶予付となると、遺族にとっては到底納得できないものであろう。今後、民事訴訟に舞台を移し、関係者の責任を追求していくことになると予想する。刑事事件では責任を問われなかった鍼灸整骨院院長も逃れられない。
 不思議なことに、鍼灸整骨院柔道整復師が起こしたという重要な背景が、報道では全く触れられていない。柔道整復師業界に横行する不正請求問題もなかなか摘発されない。柔道整復師に関わる不可思議な現象が何故まかり通っているのか、理解に苦しむ。