北九州爪切り事件の検証作業

 北九州爪切り事件の被告だった上田里美看護師が心境を語った。

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 認知症患者の足の爪を切ってけがをさせたとして、北九州八幡東病院(北九州市)の看護師だった上田里美さんが傷害罪に問われた事件で、福岡高検は今年9月に上告を断念、無罪が確定した。逆転無罪の判決を言い渡した福岡高裁は、容疑を認めたとされる捜査段階の供述調書の信用性を否定した。「刑事さんは写真でしか判断してくれず、何を言っても認めてもらえなかった」と、拘置中の102日間を振り返る上田さん。フットケアに関する捜査機関の理解不足、「鬼看護師」などと書き立てたマスコミ…。この事件は一体、何だったのか。上田さんと、弁護団の上田國廣・主任弁護士に話を聞いた。(敦賀陽平)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101124-00000001-cbn-soci


 見込み捜査で自白を迫る捜査機関と、ニュースバリューで判断し大衆の悪感情をかきたてるマスコミの犠牲になった経過が当事者の口から語られている。
 当事者は他にもいる。上田看護師を告発した病院側との訴訟が和解へと向かっている。

 北九州八幡東病院(北九州市)の入院患者の爪の処置を巡って傷害罪に問われ、福岡高裁で逆転無罪が確定した同病院の元看護課長、上田里美さん(44)が、病院を運営する特定医療法人・北九州病院に地位確認や慰謝料支払いなどを求めている訴訟の弁論準備が24日、福岡地裁小倉支部で非公開で開かれた。


 12月予定の次回期日で、双方が和解に必要な最低条件を提示することになった。


 原告側代理人の東敦子弁護士によると、原告側は次回、懲戒解雇の無効を求めたうえで、退職金、慰謝料などの金額を示す方針。


 また、東弁護士は、上田さんの行為を虐待と認定した北九州市北橋健治市長らに対し、見直しを求める考えを明らかにした。上田さん本人が26日、申し入れるという。


(2010年11月24日 読売新聞)

http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20101124-OYS1T00708.htm


 本事件は、虐待ではない。医療行為に伴う有害事象ですらない。放置すれば高齢者に危害が及ぶ肥厚した爪を丁寧に処置したことが問われた。全国の看護関係者、医療関係者を震撼させる異常事態だった。事件性がない事象を事件に仕立て上げたのは、捜査当局、マスコミ、病院、そして、行政である。全ての関係者が真摯に検証作業を行うことが求められている。