チームワークトレーニングは外科術後死亡率を低下させる

 外科術後患者の死亡率もチームワークトレーニングに関するプログラムを受けると低下する。http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/304/15/1693を読むと、次のようなことが記載されている。

  • The Veterans Health Administration (VHA)の医療チームトレーニングプログラムと外科術後転帰との関係を調べた。対象は108施設。
  • チームトレーニングは、2ヶ月の準備期間+丸1日のセッション+1年間の四半期ごとのコーチングを含む。セッションには、外科医・麻酔科医・麻酔専門看護師・看護師・臨床工学技師を含むチームを、手術室を閉じて参加させる。航空学で用いられる乗組員資質開発管理理論をヘルスケアに適用させたものを用いながら、チームとしてのトレーニングを受ける。
  • 死亡率は、術後30日以内の全ての死亡で定義する。
  • レーニングプログラムを受けた74施設では、年間死亡率が0.82[95%信頼区間、0.76-0.91]となった。一方、残りの34施設では、093[0.80-1.06]となった。重症度などを一致させた場合、トレーニンググループの減少率は対照群と比べ1.49[1.10-2.07]となった。訓練プログラムが進むほど死亡率が下がり、四半期ことに1000件あたり0.5件[0.2-1.0]の死亡が減った。
  • VHA医療チームトレーニングプログラムに参加することは術後死亡率低下と関係がある、という結論になった。


 術前・術後にチェックリストを用いながら会話をすることが最も重要な要素ではないかという仮説が提示されている。技術的なスキルのみならず、チームワーク形成スキル、コミュニケーションスキルが手術成績と関係していることが示されている。
 脳卒中ユニットは、患者の死亡率を引き下げる。同様に、外科手術でもチームワークが重要であることが示された。臨床研修制度でも、医師の基本的素養としてコミュニケーション能力があげられている。医療は多職種共同の営みである。チーム医療を作るためのスキルは、あらゆる医療分野で重要性を増している。