HTLV-1特命チームの発足の背景

 ‚g‚s‚k‚u|‚P“Á–½ƒ`[ƒ€が発足し、活動を始めた。
 仙谷官房長官の記者会見では、背景について次のように説明された。

 1点、報告をいたします。今日2時から、まだ日本ではほとんど人口に膾炙していないHTLV‐1というウイルスがございます。縄文時代から、主に母子感染によって現代まで引き継がれてきたウイルスだということでございます。で、発症率はそれ程高くないわけでありますが、発症しますとATL、これは「成人T細胞性白血病」という名前が付いておるようでありますが、皆さん方が公開のブログ等々で、あるいは新聞紙上でご覧いただけるとすれば、昨年、前宮城県知事、現在、慶応大学の教授でございます浅野史郎さんがですね、発症をされまして、今も1年くらいの闘病生活を送っているわけでありますが、骨髄移植しか、今治療の、根治の方法が無いと言われている病気でありますが、そういう病気を発症する場合と、神経の難病であるHAMというふうに言っていらっしゃいますが、HTLV‐1関連脊髄症ということで、これは神経難病で、進行性で両足の麻痺や痛み、あるいは排尿、排便障害を来していると。したがいまして、このウイルスのキャリアの方々が、ある時に発症されて、この神経難病であるHAM、もしくは非常に難治性の血液癌、白血病であるATLをですね、発症される可能性があるというふうに、今の日本の医学的水準、知見ではそのようにされているウイルスと病気でございます。で、これをですね、20年前厚生労働省が、当時は厚生省だったと思いますが、風土病であるという報告書を出しまして、検査、治療、あるいは研究開発に進まなかったと、放置してきたという問題点を、現時点では指摘されています。世界で約2000万人、日本で100万人のキャリアの方がいらっしゃるということでございまして、この母子感染が主たるものであるということからですね、これは的確に検査、つまり妊婦検診をですね、行なって、キャリアの保菌者である、保有者であるということであればですね、母乳を与えないといいましょうか、母乳で育てないことをすれば相当程度というか、ほとんどウイルス感染が起こらないというふうに今言われておるわけでありまして、そういうことを国が全国的に行なうべきであると、こういうお申し出でございました。あるいは、今後、この病気をですね、このHAMはいわゆる難病指定といいましょうか、特定疾患指定がなされていないので、そういうことも視野に置くべきだという指摘でございます。で、これはですね、私(官房長官)もつい数カ月前に知ったといいましょうか、病気自身は、実はですね、浅野さんとの個人的な関係で、1年前に「ああ、そんな縄文時代から引き継がれてきた血液癌があるのかなあ」というふうに、昨年それは気が付きましたが、こういう「日本からHTLVウイルスをなくす会」という活動が、鹿児島県、あるいは長崎県熊本県を中心に活動が徐々に広がって来たということで、数ヶ月前からですね、行政的対応といいましょうか、政府が対応すべきだという声を聞いておりまして、今日、菅総理直々に、この「ウイルスをなくす会」からお話を聞くことができたということでございます。で、政府としてはですね、先程申し上げたここまでの厚生省の対応というものが一つございましたので、厚生労働省をちょっと超えたところに、内閣総理大臣補佐官小川勝也さんをチームリーダーにして、特命チームを設置すると。で、この特命チームの議論には、患者団体の代表の方々や与野党国会関係者、オブザーバーとして加わっていただくと。そういうことで、来年度予算、これは今概算要求中でございますけれども、それから、その前段階でも、何らかのことを早急に取り組めるかどうか、精力的に分析、検討をさせたいというふうに思っているところでございます。何よりもですね、日本の国全体の国民の皆さん方に、こういう病気が、病気というかウイルスが存在をしてですね、苦しんで治療されたり、闘ったりされたりしてる方がいらっしゃると。そして、妊婦検診でこれをチェックすべきだという啓発活動をですね、まずは行なわなければならないと。あるいは、各医療機関や保健所等々にもですね、このことをよく知っていただくと。つまり、医療機関や保健所の関係者の方々も、こういうウイルスがあって、こういう深刻な、発症した場合に深刻な病気になるということを、そういうことをご存じない方々が圧倒的に多いというところから、皆さん方の発信力も借りてですね、是非このことに国民全体としても取り組もうという気運を作っていただけたらと思います。念のために申し上げますと、西日本新聞が大変熱心にこのことを今まで取り組んでいらっしゃるということを付言をいたします。


 バック・トゥ・ザ・フューチャーの主演男優、マイケル・J・フォックスは、パーキンソン病に罹患していることを告白した後、患者の代表として米議会で訴えを続け、同病の対策が進むきっかけを作った。同じような役割を浅野史郎宮城県知事が果たしている。
 http://elasano.livedoor.biz/archives/1453679.html菅総理との面談の様子が記載されている。http://elasano.livedoor.biz/archives/1453866.htmlに、浅野史郎氏は次のようなメッセージが載っている。

陳情には45分間も時間をとっていただき、菅首相をはじめとする政府要職のメンバーに患者側の話をじっくり聞いてもらった。今までに、私が陳情を受ける機会は何百回もあったが、患者として陳情をするのは、これが初めてである。こういう病気になったからこそ、こんな陳情をしているのだということを、一つの運命と感じながら、テーブルに就いていた。菅首相、仙谷官房長官は、個人的にも親しい仲であったこともあり、私の病気についてはとても心配していただいていた。こんな形で久しぶりにお会いすることになったことについても、特別な感慨がある。


菅首相には、問題の中身を十分ご理解いただき、共感してもらったからだろう、この問題解決のための特別チームを設けることを言明された。菅付さんたちが、自身の大変な身体状況を持ちながら、長い間主張し続けてこられたことが、実現に向けて大きな一歩を踏み出したと言える。これで、HAMにより身体的、精神的、経済的に大変な思いをしている患者の多くが救われることが期待される。HTLV-1の感染を広げないための妊婦への検診も、進むことだろう。こういったことが、確実に実現されることを、心から望んでいる。

 政府は、HTLV-1対策が遅れたことに反省を示すと同時に、地道に活動を続けてきた「日本からHTLVウイルスをなくす会」の活動に関し、敬意を表している。同会のホームページをみると、次のような感想が記載されている。

平成22年9月21日


運がいいと、いってしまえば簡単だが、チャンスはそう簡単に巡ってはこないことを、分かっている人はそれを経験した人だと思う。2003年にHAM患者会を設立し、難病認定を求める運動を始めた。厚労省に何度も足を運んで、そのたびに「風土病だから」と突き返された。鹿児島からしかも介護人付で上京するのだからめいっぱい議員会館を回り、国会議員に協力をお願いした。同時にATLを含めたHTLV-1総合対策を求めて厚労省の窓口をたたいたのだが、担当部署はない。勝手に結核感染症課に面会を求め、窓口を作ってほしい…と云うところから始めた。
それから7年、相変わらず前を向いて走り続けて(実際は歩くこともでないが)8年目の時にチャンスが巡ってきたのである。今までの苦労を知り、救ってくれた人たちに出会ったことで運命が変わった。巡り巡って訪れたチャンスだったのである。


 さらに、仙谷官房長官は、HTLV-1問題について積極的な報道を行ったhttp://www.nishinippon.co.jp/nnp/feature/article4/についても、わざわざ言及している。「日本からHTLVウイルスをなくす会」のホームページにも、西日本新聞社記者の覚悟について、触れた文章がある。

平成22年3月15日


3月8日付の西日本新聞朝刊記事を見て吹っ飛んだ!記者さんが我が家へ取材に来られたのが2月のこと。患者会を立ち上げたのが7年前、その2年後にNPOを設立して活動を広げた。初めてのことで何からスタートしてよいのか迷ったが、「HTLV−1総合対策」をめざして、それを最終目的に逆算して計画を立てた。毎日が悪戦苦闘だったせいか、過ぎ去ったことを後悔する暇などなかった。
記者さんは「九州に多い白血病なのに九州の新聞社として今まで取り扱わなかったことを申し訳ない・・」と言われた。
その言葉の大きさがそのまま紙面になったと思った。何かが変わる!そんな気がする。報道こそが世論を動かせる。


 HTLV-1問題に地道に取り組んできた医学者たちの活動も大きい。第3回HTLV-1研究会:ごあいさつには次のような記載がある。

 今年は、皆様方の様々な活動のおかげで、HTLV-1とその関連疾患関について、メディアおよび行政の側でも関心が高まって来ている様に思われます。特に、西日本新聞の精力的かつ継続的な一連の報道は、様々なレベルで大きなインパクトを与えている様に思います。また、科学技術振興機構による「地域間連携シンポジウム」でも、継続的にATLに関するシンポジウムを開催して頂いており、第3回目に当たる今年は長崎でシンポジウムが開催されて大変な盛況でした。厚生労働省産婦人科領域の班会議(齋藤 滋班長)の報告をきっかけに、母子感染予防対策の充実が検討され、妊婦の抗体検査が全国的に奨励されることになりました。更に、医学専門家と患者団体等の代表からなる「HTLV-1感染総合対策等に関する有識者会議」が昨年から活動を始め、厚生労働省の関係者との間で既に4回の会合を開いております。この会議は、非公式なものではありますが、定期的に開催されており、臨床家、研究者および患者側と、行政側との間の情報および問題意識の共有に貢献していると考えられます。この様に、社会的にも徐々に注目度が高まり、行政側も少しずつ対応を進めて来ている様に思われます。これまでの様々な場面での議論を通じて、既に「HTLV-1研究会」が組織されており、基礎から臨床までの広い領域の関係者が一同に集まり議論する場が準備されている事の意義が大変大きく、かつ社会的に説得力を持つ事を実感しております。我々研究者および臨床家の立場からも、これを機会に更に研究を発展させてゆきたいと思っております。


 患者会、新聞社、医学者三者それぞれの活動が、ここにきて一気に実を結んだ。関係者の努力に心から敬意を払いたい。HAMという脊髄疾患が関わっており、リハビリテーション医療と全く無関係でもない。本ブログでも意識的にこの問題を継続して取り上げていくことにする。