阿久根市にみる劇場型政治の行方

 阿久根市長のリコール運動が進む中、「阿久根市長リコール委員会」監事で養鶏業の西平良将氏が出直し市長選への立候補の意思を表明した。

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 西平氏は同日夜、リコール委が受任者約300人を集めて市内で開いた報告集会の冒頭にあいさつ。長男(6)に障害があり、昨年12月に竹原市長の障害者の出生を否定するかのようなブログ記載が問題化した際、抗議したことがきっかけでリコール運動に携わったことなどの経緯を説明。「自分が(竹原市長派の)矢面に立ち、阿久根の将来を引っ張っていく力になりたいと思った」と立候補の動機を語り、「弱者にやさしい市民参加型の町づくりを目指す」と決意を示した。


 西平氏は集会後の記者会見で、竹原市長の改革について「公務員の人件費削減に切り込む姿勢は評価したい。問題は手法で、破壊では改革につながらない」と強調。また、市長が敵視する議会や職員組合との関係について「一線を引き、しっかり議論でき、なれ合いなき関係を築いていく」と述べた。

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/198411


 敵対者を意識的に作り、感情に訴えて強引に政治を行う手法は、小泉元首相が得意としていた。郵政選挙での大勝という成功例を模倣し、同様の劇場型政治を行う政治家が次から次へと生まれている。阿久根市では、深刻な地域経済の中、優遇されている職員や議員などに対する市民の反感を竹原氏があおり、二度の市長選を勝ち抜いた。既得権益に切り込む姿に共感を呼ぶ市民が、市長を支えていた。
 数々の暴言、法律無視の市政運営など、竹原阿久根市長の暴走がマスコミを賑わせた。阿久根市の悪評が全国に広がっていった。住民を気の毒に思いながらも、そのような市長を選んだのだから自業自得だろうという冷ややかな思いもしていた。
 しかし、市長解職運動が始まってからの阿久根市は様変わりである。短期間に有権者過半数を超える1万364人分もの署名を集めた。そして、リコール成立後の選挙を見越して、対抗馬まで準備した。反対勢力との戦いにのみ力を注ぎ、市政の方向を示し得なかった現市長とは異なり、見事な草の根運動を展開している。阿久根という地名が、暴走政治家の代名詞から劇場型政治家排除の代表例に生まれ変わることを願っている。
 鹿児島でリハビリテーション医学会があった時、阿久根市のさつま揚げと焼酎を堪能した。一連の騒動がおさまった暁には、取り寄せて味わってみたいと思う。