休みが多い時期は脳卒中機能予後は不良となる

 日本脳卒中学会内に「脳卒中治療ガイドライン2009」の全文が掲載されている。1-4.急性期リハビリテーションのところに、次のような記載がある。

 訓練の量はリハビリテーションの効果を検討する上で重要な要素である。(中略)脳卒中ユニットに入院期間中のリハビリテーション実施日数が多い 16)ほど機能予後が良かった (IIa)。


 この16)の文献、The Effect of Weekends and Holidays on Stroke Outcome in Acute Stroke Units - Abstract - Cerebrovascular Diseases 2005, Vol. 20, No. 5 - Karger Publishersは、概ね次のような内容である。

  • 脳卒中ユニットがある日本の10施設が研究に参加した。
  • 発症後72時間以内に入院した完成脳卒中の機能予後、死亡率を調べた。予後良好は、modified Rankin scale(mRS)0-1とし、入院後21日目の状態と退院時の状態を記録した。Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。
  • 対象は、2000年10月から2001年12月までに入院した1,134名である。
  • なお、日本では、週末にスタッフ数が少なくなり、リハビリテーションサービスも平日にしか実施されていない。最初の3週間の平日は、9日から16日の範囲にある。
  • 退院時mRS0-1となるハザード比は、週末ないし休日と比し、平日で1.385(90%信頼区間:1.087-1.764)となり、有意だった。同様に、死亡率は0.477(90%信頼区間:0.285-0.798)と有意差があった。
  • リハビリテーションを施行された858名を平日比率で3分割したところ、平日比率が高い群(>71.4%)は、低い群(<66.6%)と比し、退院時mRS0-1となるハザード比は1.524(90%信頼区間:1.053-2.206)と有意差があった。
  • 平日比率が高い群は、入院後平均4.3日でPTが始まった。入院後21日以内における総PT実施日は、平日比率高値群9.9日に対し、低値群8.3日であり、有意差があった。なお、平日比率高値群においては、総OT実施日1.3日、総ST実施日2.2日だった。平均入院日数は、平日比率高値群において48.0日であり、他の群と有意差はなかった。


 脳卒中急性期リハビリテーションの重要性を指摘した有名な論文である。簡単にいうと、ゴールデンウィークや正月休みをはさむと、脳卒中予後良好群が減り、死亡率も高まるということである。脳卒中になるのなら、国民の祝日がない6月が望ましい。
 あらためて読んでみると、時代差を感じる。2000年ないし2001年となると、リハビリテーションスタッフ数が現在よりはるかに少なかった。回復期リハビリテーション病棟も診療報酬制度で認められたばかりである。平均入院日数はかなり長く、機能分化が行われていない。脳卒中ユニットといえども、発症からPTが始まる時期が遅く、入院後3週間以内にPTを実施した日も少ない。それでも、平日比率高値群の方が機能予後は良い。なお、死亡率の方は看護師配置数の影響の方が強いと考察されている。
 本論文は、機能予後をmRSで判定している。mRS0-1となると、脳卒中に伴う機能障害がないか、あっても日常生活に影響を及ぼさない程度である。したがって、より重症な脳卒中で早期からのリハビリテーションが有効であったかどうか、本研究の結果をもとに判断することはできない。
 早期リハビリテーションの不足が不必要な安静臥床を招き廃用症候群を生じる。2010年度診療報酬改定において、回復期リハビリテーション病棟に休日加算が設けられ、365日リハビリテーションがほぼ標準化されようとしている。急性期病院においても、切れ目のないリハビリテーションサービス提供が必要であることを、本論文は示唆している。