深緑の室生寺

 先週、大阪で会議があったついでに、足を伸ばし奈良路を旅してきました。初めに向かったのは、女人高野 室生寺です。
 最初に奈良を訪れたのは高校の修学旅行の時で、東大寺大仏の荘厳さ、猿沢池に移る興福寺五重塔の美しさに圧倒された想い出が残っています。それ以来、機会があるたびに京都や奈良の寺社巡りをするようにしています。しかし、交通の便が比較的良い奈良公園周辺や西ノ京、斑鳩と異なり、室生寺までは足を伸ばすことはさすがにありませんでした。今回、休みを1日多くとり、実質1日半の旅程を確保できたこともあり、思い切って奈良県東部に足を踏み入れてみることにしました。



 大阪上本町駅から、近鉄大阪線の急行に乗り、約1時間で室生口大野駅に到着しました。少しでも見学する時間を確保しようと思い、早起きし、9時頃駅に着くことができましたが、室生寺行きのバスは時間に1本しかなく、しかも、始発は午前9時50分始発でした。観光地だと思い、事前に情報収集を怠った迂闊さに気づかされました。幸いにも、駅前にたった1台だけ残っていたタクシーに飛び乗り、目的地に向かうことができました。

 


 タクシーで約1分走ったところに、大野寺という小さなお寺があります。室生寺を囲む聖域の西の境界になります。この寺の脇を流れている宇陀川の対岸に高さ11.5mの弥勒大磨崖仏が彫られています。




 約7kmの距離を室生川に沿って登ったところに、室生寺があります。太鼓橋のたもとに橋本屋旅館があります。この橋本屋は老舗旅館として有名で、室生の里を愛した写真家土門拳はここに逗留して写真を撮り続けました。





 室生寺は、奈良県の東部、三重県との県境に近いの山岳地帯にあります。平安初期の創建で、密教の修行場として信仰を集めてきました。女性の入山を厳しく制限してきた高野山とは異なり、女性の参詣を許したことより、「女人高野」をして親しまれてきました。
 太鼓橋を渡り、表門の前を左折します。仁王門を抜けると、金堂を見上げる石段が見えてきます。




 石段を上った正面に金堂、左手に弥勒堂があります。ちょうど、http://www.1300.jp/event/detail/yamatoji/yeve10119-6.htmlが行われており、「普段は入ることができない金堂内の外陣から、ご本尊の釈迦如来立像や十一面観音立像(いずれも国宝)や里帰りにより勢揃いした十二神将立像(重文)などが特別に拝観できます。」という幸運な機会に巡り会うことができました。







 金堂左手の石段を登ると、本堂があります。やや艶かしいお姿の如意輪観音坐像が安置されています。
 本堂奥の石段上には、室生寺の象徴ともいえる五重塔が美しい姿を見せています。この五重塔は、平成10年の台風で倒木により大きな損傷を受けたのですが、幸いにも倒壊には至らず、約2年間の修復作業の上に、以前にも増して美しい姿を甦らせました。



 倒れた巨木の切り株です。








 さらに、奥の院に向かい、ひたすら石段を登り続けました。見上げると嘆息がでそうな長い石段の数は約700。すれ違う人が足を引きずっていたため、足腰でも悪いのかと最初は思っていましたが、上まであがってそうではないことに気づかされました。足のふるえに気遣いながら、なんとか来た道を戻り、室生寺に別れを告げました。