所在不明高齢者の実態

 本日の朝日新聞に、「高齢者不明 見えぬ実態」という記事が掲載された。現時点では、まだネットにはアップされていない。興味あるデータが2つ提示されている。

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 総務省住民制度課によると、2009年度に職権で消除したのは、5万9419件。国籍の喪失など特殊な事情で削除するケースもあるが、多くは各自治体による調査で「不在」が判明したもので、住民登録の場所が空き地になっていたようなケースだ。
 都道府県別では、東京都が1万7342件で最も多く、次いで大阪府の6138件、埼玉県の5047件となっている。一方で福井県は55件、島根県は60件と少ない。人口移動が多い大都市圏ほど、住民基本台帳と実態とが食い違うことが多いことがわかる。

 警察庁によると、09年に全国の警察が届け出を受けた身元不明遺体は1135人。過去10年は毎年1400〜1千人ほどで推移している。後日身元が判明するケースは15%程度にとどまり、身元不明遺体の捜査書類は09年度末時点で1万6765人分に上るという。


 総務省のデータは探すことはできなかったが、警察庁の資料は都道府県警察における身元不明死者情報ページにある。警視庁(東京都)分だけで、675件ある。
 恐ろしい数値が並んでいる。総務省のデータをみると、届出されていない家出人で所在確認されていない者だけでは全く足りず、届出さえされていない者が多いことがわかる。その中の一定部分は、身元不明遺体(無縁仏)になっている。


 家族、自治体の対応に着目すると、所在不明者は次のように分類できる。

  • 死亡したことを家族は認識していたが、死亡届を自治体に提出されなかった
  • 行方不明になったことを家族は認識していたが、警察にも自治体にも届け出をしなかった
  • 警察や自治体に届け出をしたが、一定期間経った後も失踪宣告をせず、自治体も職権消除をしなかった


 騒動の発端になった足立区の事例は、最初の群に相当する。明らかな犯罪である。
 今回多数見つかったのは、2番目の群である。いつか帰ってくることを期待して住民票を抹消しないというわけではない。家族関係が希薄、ないし、破綻していることを意味している。
 最後の例は、自治体が住民とのトラブルを恐れ、無作為に終始したことが原因である。怠慢ととられても仕方がない。


 所在不明者は、病気にならなければ、介護も必要にならない。寿命がつきることもない。数十年経てば100歳を簡単に超える。医療保険介護保険も利用しない高齢者が姿を見せない場合には、個人情報保護法にとらわれず、積極的に生存証明を求める必要がある。