完成直後の高速道路に穴、ガーゼ遺残事故と酷似

 完成したばかりの仙台北部道路に穴が開いた。

 3月末に開通した仙台市北部周辺を通る自動車専用道路、仙台北部道路の利府しらかし台インターチェンジ(IC)‐富谷ジャンクション(JCT)間の下り車線に、開通から約1カ月で穴が開いたことが分かった。


(中略)


 国交省東北地方整備局などによると、道路を管理する「NEXCO東日本」(本社・東京都)が4月下旬、高架橋の接合部近くに直径約30センチ、深さ約1・5センチの穴を見つけた。舗装表面がはがれる「ポットホール」と呼ばれる穴で、底にベニヤ板が露出していた。ポットホールは施工や品質の不良などが原因とされるが、調査の結果、露出した板も含め長さ約1メートル20センチ、幅約30センチのベニヤ2枚が埋まっていた。

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100718ddm041040133000c.html


 原因は次のとおり。

 ベニヤ板はアスファルト舗装の作業中、油などの汚れを避ける部分に敷き、工事が終わったら撤去する。今回は高架橋の接合部分に十数枚のベニヤ板を敷いたという。しかし、撤去時にベニヤ板の枚数は確認せず、建設会社の担当者は「本当にきれいに埋まっていて分からなかった。穴が開いて調査し、初めて気づいた」と話した。

http://mainichi.jp/area/miyagi/news/20100718ddlk04040041000c.html


 呼んでいて、既視感を覚えた。これは、手術時のガーゼ遺残事故と全く同じである。
 手術時に使用されるガーゼは、出血量を測定するために必ず重量を測る。また、体内に取り残さないために、ガーゼカウントマニュアル - 熊本大学医学部附属病院をみると、次のような手順で確認が行われる。

  • ガーゼはX線で確認できるものを用いる。
  • 外回り看護婦は出血量測定後のガーゼを10枚毎に束ねておく。
  • 執刀医はカーゼカウントの一致を確認するまでは、閉胸・閉腹しない。
    • 執刀医は胸腔内・腹腔内にガーゼがないことを確認する。
    • 器械出し看護婦(医師)は、術野のガーゼの枚数を確認して、執刀医に報告する。
    • 外回り看護婦は術野以外のガーゼの枚数を確認して、執刀医に報告する。※ 記録には『ガーゼカウント施行』と残す。
    • 執刀医はガーゼカウントの結果を判断して、自らの責任で閉胸・閉腹する。
  • ガーゼの枚数が合わない場合
    • 執刀医、器械出し看護婦(医師)、外回り看護婦が再確認をする。
    • 再確認後もガーゼの枚数が合わない場合は、執刀医はレントゲン写真で体内にガーゼがないことを確認後、執刀医の判断のもとに閉胸・閉腹する。


 京都大学大学院医学研究科医療経済学教室訳 医療安全のエビデンス:患者を守る実践方策第22章 遺残ガーゼをみると、ガーゼ等の遺残頻度は、1/100例〜1/5,000例とのことである。発生割合は決して少なくなく、外科系医師が神経質になるのも理由がある。


 今回、仙台北部道路で施行ミスが報道されたのは、完成後わずか1ヶ月で道路に穴が開いたからである。重大な事故に結びつ危険性があったことを考えると、早期に発見されたことは幸いである。
 手抜き工事と言えるかどうかはわからない。しかし、同種の事故再発を防ぐ意味では、手術現場で行われている方法と同様に、ベニヤ板のカウントが必要となる。ただし、X線で検査をするという方法論はさすがにとれない。