病院での窒息事故相次いで報道

 病院での窒息事故が相次いで報道された。

 川西市立川西病院(同市東畦野5)で昨年10月、入院していた兵庫県猪名川町の男性=当時(69)=が食事をのどに詰まらせて死亡していたことが16日、分かった。入院時に「食事は自分でできるが、詰め込みすぎる癖があるので見ていてほしい」と依頼を受けたが、当日は介助していなかったという。市はミスを認め同日、遺族に対して慰謝料など損害賠償として2700万円を支払うことを発表。3月定例市会に提案する。
 同病院によると、男性は昨年10月7日に肺炎で入院し、食事時の介助について、家族から申し出があった。同11日、夕食を女性看護師(45)が配膳。食べる様子を確認して病室を離れた約20分後、担当の別の女性看護師(50)が、のどを詰まらせた男性に気付いた。心肺停止状態になっていたため蘇生を試みたが、亡くなったという。
 看護記録用紙には「食事介助」「見守りが必要」などと書かれていたが、担当看護師は読んでいなかったという。配膳した看護師も、食事時の見守りに関しては知らなかったという。
 通報を受けた川西署は業務上過失致死容疑で捜査しており、看護師2人を同容疑で書類送検する方針。
(2010/02/16 19:32)

http://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/0002717634.shtml

 半田市の市立半田病院は、09年7月に入院患者が食事をのどに詰まらせて窒息死する医療事故があったと18日発表した。市によると遺族に850万円を支払うことで和解が成立したといい、3月定例市議会に損害賠償額の決定案を提案する。

 死亡した患者は武豊町の86歳の女性。09年6月29日に出血性ショックの疑いで半田病院の救命救急センターで受診し、ぼうこう炎などの疑いがあり入院した。7月5日の昼食後に退院することになり、看護師が介助して食事をさせ、お茶を飲ませたところ、ご飯とおかずをのどに詰まらせて死亡したという。女性の入れ歯の使用を把握していなかったなど、病院側に落ち度があったという。【河部修志】

http://mainichi.jp/area/aichi/news/20100219ddlk23040235000c.html


 川西病院では、監視をせずに食事をさせたことが問題となっている。一方、半田病院では、介助中に窒息事故が生じている。しかし、それ以外の点では、2つの窒息事故は実に酷似している。

  • 食事介助ないし見守りが必要な高齢者だった。
  • 急性期病棟で起こった。
  • 入院してまもない時期だった。
  • 和解が成立した。
  • 自治体立病院のため、市議会に高額の賠償金に関する提案がされた。


 嚥下機能が低下している要介護高齢者では、誤嚥や窒息の危険性がきわめて高い。食事や体位、介助法の工夫が不可欠である。場合により、マンツーマンで30分以上の食事介助が必要な場合もある。しかし、急性期病棟では、様々な医療行為に追われ、看護師が食事介助をする余裕はほとんどない。しかも、1週間で病棟の半分近くの患者が入れ替わる。入院直後の病態不安定な患者に意識が集中すると、急性期を脱した患者に対しては看護師の観察もおろそかになる。
 高齢化に伴い、要介護高齢者の入院は今後も増え続ける。急性期病棟での窒息事故予防は、リスク管理上、重要な課題となっている。