平成22年度診療報酬のリハビリテーション関係改定項目

 平成22年度診療報酬改定の全貌がようやく見えてきた。厚生労働省:第164回中央社会保険医療協議会総会資料の中に、平成22年度診療報酬改定における個別改定項目について、という項がある。資料(総−6)(PDF:646KB)は、『骨子における重要課題関連項目(入院)及び「四つの視点」関連項目(入院を中心に)』という資料である。リハビリテーション関係の改定項目に関し、解釈を行う。


# 疾患別リハビリテーションの充実について(35〜38ページ)

1.疾患別リハビリテーションの充実


(1) 脳卒中等におけるリハビリテーションの重要性に鑑み、脳血管疾患等リハビリテーション(I)(II)の評価を引き上げる。また、廃用症候群に対するリハビリテーションについて、その疾患特性に応じた評価を行う。
(2) 大腿骨頚部骨折をはじめとして、発症あるいは術後早期からの集中的なリハビリテーションが重要であることから、運動器リハビリテーションについて、より充実した人員配置を評価した新たな区分を新設する。

【解釈】

  • 廃用症候群以外の脳血管疾患等リハビリテーション(I)(II)は純粋に引き上げである。ただし、微増と予測する。
  • 新設される運動器リハビリテーション(I)の算定要件は、「入院中の患者に対し、運動器リハビリテーションを行った場合に算定する。」となっている。具体的な施設基準は明らかにはなっていない。脳血管疾患等リハビリテーション(II)と同程度の施設基準および点数となるのではないかと予測する。運動器リハビリテーション(III)(旧II)が80点で据え置きであることを考えると、運動器リハビリテーション(II)(旧I)を引き下げる理由はなく、こちらも微増と予測する。整形外科疾患は入院と外来の差別化が実施される。入院中は(I)で請求するが、退院後は(II)の点数になる。
  • 廃用症候群に対する脳血管疾患リハビリテーション料は、大幅な引き下げと予測する。大腿骨頚部骨折術後のリハビリテーションにおいて、廃用症候群の病名をつけて高い診療報酬を請求する事例に対する対策が行われる。したがって、運動器リハビリテーション(I)(II)より低い水準まで下げられると予測する。

(3) 心大血管疾患リハビリテーションについては、その実施により虚血性心疾患をはじめとする心疾患患者の長期予後を改善することが示されているが、その実施が可能な施設が全国で418 施設と尐ないことから、施設基準の見直しを行う。

【解釈】

  • 医師要件の見直しが行われた。「循環器科又は心臓血管外科の医師が心大血管疾患リハビリテーションを実施している時間帯において常時勤務しており、心大血管疾患リハビリテーションの経験を有する専任の常勤医師が1名以上勤務していること。」という表現になっている。循環器科又は心臓血管外科の医師が、他の業務でもかまわないので、リハビリテーションを行っている時間帯に支援に来ているならば、心大血管疾患リハビリテーション料を算定できるというように要件を緩和したと推測する。

2.発症早期からのリハビリテーションの充実


発症早期からのリハビリテーションの充実を図るため、疾患別リハビリテーションの早期リハビリテーション加算を引き上げる。

【解釈】

  • 単純な点数の引き上げである。

3.維持期のリハビリテーションについて


維持期のリハビリテーションについては、平成21 年度介護報酬改定において充実が図られたが、その実施状況に鑑み、今回の診療報酬改定においては、介護サービスとしてのリハビリテーションを提供することが適切と考えられる患者に対して介護サービスに係る情報を提供することを要件として、維持期における月 13 単位までのリハビリテ
ーションの提供を継続する。

【解釈】

  • 「介護サービスとしてのリハビリテーションを提供することが適切と考えられる患者に対して介護サービスに係る情報を提供することを要件として」という表現が微妙である。ケアマネージャーとの連携が義務づけられる可能性がある。


# 回復期等における充実したリハビリテーションの評価(39〜42ページ)

1.充実したリハビリテーションを行う回復期リハビリテーション病棟の評価について


(1) 集中的なリハビリテーションを提供する観点から、回復期リハビリテーション病棟入院料を算定する病棟において提供すべきリハビリテーションの単位数の基準を設ける。また、回復期リハビリテーション病棟入院料1を算定する病棟においては実際には多くの重症患者を受け入れていることから、その割合の基準を引き上げる。また、これらの見直しに伴い、評価の引き上げを行う。

【解釈】

  • 回復期リハビリテーション病棟入院料(I)(II)とも点数が引き上げられる。いずれにおいても、「回復期リハビリテーションを要する状態の患者に対し、1人1日あたり2単位以上リハビリテーションが行われていること」という文言が加わった。また、(I)においては、重症患者率は1割5分から2割に引き上げられた。

(2) より充実したリハビリテーションを提供する観点から、土日を含めいつでもリハビリテーションを提供できる体制をとる病棟の評価や、集中的にリハビリテーションを行う病棟に対する評価を新設する。


休日リハビリテーション提供体制加算(1日につき) ○○○点
[算定要件]
休日を含め、週7日間リハビリテーションを提供できる体制をとっていること


リハビリテーション充実加算(1日につき)○○○点
[算定要件]
回復期リハビリテーションを要する状態の患者に対し、1人1日あたり6単位以上リハビリテーションが行われていること

【解釈】


 この他、亜急性期病棟におけるリハビリテーションの評価、がん患者や難病患者に対するリハビリテーションの評価、地域連携診療計画退院時指導料で退院後の連携に対する評価など、リハビリテーション関係者にとってはプラス材料となる診療報酬改定が行われる。
 疾患別リハビリテーション料算定日数上限がそのままとなっている。また、回復期リハビリテーション料に対する成果主義も本質的な部分には手が加えられていない。廃用症候群に対する大幅なマイナス改定が予想される。ただし、全体として、平成18年度(2006年度)以降、医療費削減政策で狙い撃ちにされたリハビリテーション分野に対し、多少のゆり戻しを行ったという印象がある。