リハビリテーション訓練時に発生した急変・事故について


 坂崎ひろみら:リハビリテーション訓練時に発生した急変・事故について.総合リハ37:1067〜1072、2009.を読んだ。

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リハビリ中の事故多発?(2008年8月15日)


 訓練中のリスク管理についてまとめた貴重な論文である。


 急変は、4年間で126件であり、嘔吐が59件46.8%と最も多く、気分不快23件18.3%、バイタル変化16件12.7%、てんかん14件11.1%と続く。一方、事故は4年間で76件であり、転倒・転落が54件71.1%と最も多い。うち、骨折は4件(剥離骨折2件、右肘骨折、肋骨骨折各1件)であり、腱断裂による再手術1件が最も重篤な事例だった。発生率は、急変が0.0021%(1,587時間に1件)、事故が0.013%(2,564時間に1件)となる。


 著者は、急変・事故に関して次のようにまとめている。

 急変ではリスクを配慮しても起こりうる事例が多く、急変後の対応指導が必要とされた。また、事故においては、若年療法士においては経験不足からなる単純ミス、3年目以上では1日に多くの患者に対応するなかで予見可能性を重視することが必要であった。


 病棟で職員がそばにいない場合に生じる転倒と比べ、療法士がついている場合に転倒し骨折事故を生じると、管理監督責任がより強く問われる。療法士が少ない場合、個別訓練と言いながら、複数の患者を交互に対応することがある。他の患者の訓練をしていて目を離した際にプラットフォームから立ちあがって転倒し、大腿骨頚部骨折を受傷した例がいた。事故を起こした病院医師から相談された時、裁判になっても勝ち目がないですね、とコメントしたことがある。安全管理強化の意味でも、療法士1人あたりの受け持ち人数を制限する必要があると痛感させられた事例であった。
 本発表で指摘はないが、嚥下訓練中の窒息・誤嚥は死亡につながるリスクが高く、注意が必要である。また、クモ膜下出血や頭部外傷後で歩行可能な認知機能患者の場合、離院事故なども起こりうる。年に1回程度はスタッフ総出で周辺を捜索することがある。寒冷地では凍死の危険があり、都市部では交通事故に巻き込まれる恐れがある。リハビリテーション分野は結構ハイリスクであり、リスク管理の徹底が必要である。