回復期リハビリテーション病棟入院料2算定病棟のばらつき

 厚生労働省:第26回中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会資料内にある資料(検−2−3)の全体版(PDF:1,059KB)より、病棟調査の内容を紹介する。


# 回答病棟の概況
1.算定している診療報酬

  • 652病棟から回答があった。回収率不明(施設調査の回収率は49.6%)。
  • 「入院料1かつ重症患者回復病棟加算(1740点)」算定 88.0 × 0.634 = 55.8%
  • 「入院料1(1690点)」のみ算定 32.2%
  • 「入院料2(1595点)」算定 12.0%
    • うち、H20.4以降に基準取得(実績期間)の病棟は79.5%
    • うち、H20.3以前に基準取得(継続算定)の病棟は20.5%


2.病床数、平均在院日数等

  • 1病棟当たりの病床数は平均45.4床、入院患者数は平均39.6人。病床利用率は平均89.5%、うち95%以上の病棟は33.4%。


  • 非適応患者率は2.5%(算定日数上限超1.1%、算定対象外1.4%。
  • 平均在院日数は平均74.8日。


# 病棟の職員配置

  • 1病棟当たりの専従・専任している医師数は2.3人。うち日本リハビリテーション医学会認定臨床医0.3人、同専門医0.4人。
  • 50床当たり専従職員数: PT4.6人、OT3.3人、ST0.9人。


# 入棟患者の状況
1.入棟患者の受け入れ基準

  • 重篤な合併症を併発していない」が最も多く、62.6%だった。「中心静脈栄養をしていない」が46.0%だったのに対し、「経鼻経管栄養をしていないこと」が8.4%、「胃ろう・腸ろうをしていないこと」が1.5%と少なかった。「重度の認知症にないこと」30.1%、「気管切開をしていないこと」16.3%と続いた。


2.新入棟患者の状況: 3ヶ月間[H21.4〜6月]における新入棟患者28,868人(有効回答575病棟)
(1)日常生活機能評価10点以上の重症患者の割合

  • 「入院料1かつ重症患者回復病棟加算(1740点)」算定: 29.3%
  • 「入院料1(1690点)」のみ算定: 29.2%
  • 「入院料2(1595点)」算定(H20.4以降に基準取得:実績期間): 27.2%
  • 「入院料2(1595点)」算定(H20.3以前に基準取得:継続算定): 16.5%


(2)主たる原因疾患

  • 「入院料2(1595点)」算定病棟は、脳血管疾患の割合が少ない。特に、H20.3以前に基準取得(継続算定)の病棟では、脳血管疾患が16.1%と低く、骨折が50.1%、神経、筋、靭帯損傷が16.3%と整形外科疾患の割合が高い。


# 退棟患者の状況
1.入棟時に重症であった患者の退棟時の日常生活機能評価の改善状況: 3ヶ月間[H21.4〜6月]における退棟患者27,423人(有効回答542病棟)

  • 「入院料1かつ重症患者回復病棟加算(1740点)」算定: 59.5%
  • 「入院料1(1690点)」のみ算定: 59.1%
  • 「入院料2(1595点)」算定(H20.4以降に基準取得:実績期間): 45.4%
  • 「入院料2(1595点)」算定(H20.3以前に基準取得:継続算定): 37.8%


2.H21.1〜6月のデータより
(1)在宅復帰率

  • 「全体」: 平均75.5%
  • 「入院料1かつ重症患者回復病棟加算(1740点)」算定: 平均75.7%
  • 「入院料1(1690点)」のみ算定: 平均76.0%
  • 「入院料2(1595点)」算定(H20.4以降に基準取得:実績期間): 平均73.3%
  • 「入院料2(1595点)」算定(H20.3以前に基準取得:継続算定): 平均70.4%
  • 「入院料1かつ重症患者回復病棟加算」算定病棟は正規分布に近い。一方、「入院料2」算定病棟(実績期間)では、ばらつきがあり、在宅復帰率60%未満が22.6%を占める。



(2)重症患者回復率

  • 「全体」: 平均54.8%
  • 「入院料1かつ重症患者回復病棟加算(1740点)」算定: 平均56.2%
  • 「入院料1(1690点)」のみ算定: 平均54.7%
  • 「入院料2(1595点)」算定(H20.4以降に基準取得:実績期間): 平均47.9%
  • 「入院料2(1595点)」算定(H20.3以前に基準取得:継続算定): 平均45.5%
  • 「入院料1かつ重症患者回復病棟加算」算定病棟は60〜70%未満にピークがある分布を示す。一方、「入院料2」算定病棟(実績期間)では、ばらつきがあり、重症患者回復率30%未満が21.0%を占める。



# リハビリテーションの実施状況: 患者1人1日当たりリハビリテーション実施単位数

  • 「全体」: PT 平均2.7単位、OT 平均2.0単位、ST 平均0.8単位。
  • 「入院料1かつ重症患者回復病棟加算」算定病棟では、STを除き正規分布に近い分布を示す。一方、「入院料2」算定病棟(実績期間)では、ばらつきがある。PTでは2単位未満が35.5%と最も多い。OTも1〜2単位にピークを示す。
  • PT、OT、STを単純加算しても2単位に満たない病棟を計算してみると、「全体」652病棟中8.3%54病棟ある。内訳は、「入院料1かつ重症患者回復病棟加算」算定24病棟、「入院料1」のみ算定15病棟、「入院料2」算定病棟(実績期間)13病棟、「入院料2」算定病棟(継続算定)2病棟となった。



【病棟調査に関するまとめと私見
 回復期リハビリテーション病棟入院料2算定病棟にはばらつきがある。在宅復帰率、重症患者回復率、患者1人1日当たりリハビリテーション実施単位数いずれを見ても、低い水準の病棟と高い水準の病棟が混在している。一方、十分なリハビリテーションを提供していないにも関わらず、「入院料1かつ重症患者回復病棟加算」を算定している病棟もある。
 全体としてみると、「質の高いリハビリテーション」を提供している病棟が、入院料1の方に多く含まれているということを述べることはできる。ただし、今回のデータは交絡因子を調整していない。また、在宅復帰率に重大な影響を及ぼす介護力については触れられていない。回復期リハビリテーション病棟入院料に使用された在宅等復帰率、重症患者率、重症患者回復率などの指標が「質の評価」を図る手法として適切であったとは本調査からは断定できない。
 なお、病棟調査に回答した病棟は、リハビリテーションに熱心な病棟が多く含まれ、選択バイアスがかかっている。その目でみると、リハビリテーション医学会の専門医数は悲しくなるほどである。また、受け入れ基準が厳しい病棟も少なくない。
 本調査は、全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会の実態調査と同様、今後の回復期リハビリテーション病棟のあり方を考える上で基礎的な資料となることは間違いない。