鳴門病院、誤投薬事故調査報告書をホームページ上に公表

 2009年8月20日、健康保険鳴門病院は、「健康保険鳴門病院誤投薬事故調査報告書」の公表についてをホームページ上に公表した。

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 事故の原因は、個人や職種に特定されるものではなく、組織体制やシステム、つまりは、病院全体の問題として捉えていかなければなりません。
 報告書では、病院内のシステムや教育・研修体制、職員間のコミュニケーションの問題等々が指摘されました。
 事故発生後に当院で策定した対策については、委員会において概ね妥当であるとの評価をいただいておりますが、なお一層、医療安全に取り組んで行く所存であります。
 当院では、この事故をいつまでも記憶に留めておくよう、11月18日を「医療安全の日」に設定し、職員一丸となって、病院への信頼を取り戻すべく努力を続けてまいります。


平成21年8月20日
病院長 増田和彦


 添付書類として、健康保険鳴門病院誤投薬事故調査報告書 (PDF:819KB)危険薬の誤投与防止マニュアル (PDF:320KB)が掲載されている。


 事故報告書の最後に次のようなまとめがある。

おわりに


 鳴門病院が薬剤の誤投与事故後、迅速に外部委員3 名を含むこの委員会を設置し、このような事故を二度と繰り返すことのないよう、早期に防止策を講じることとしたことは、事故再発防止に対する決意と医療に対する不信感を払拭する決意の表れであった。
 本委員会は計7 回の開催であったが、その間において病院からいくつかの資料を取り寄せ、委員間での討論も十分に行い、事故の事実経過を概ね明らかにすることができたと考える。
 委員会には毎回、ご遺族にも参加をいただき、気がかりなことを伺い、ご意見をいただいた。事故の直後の時期からすべての委員会に欠かさずご参加をいただいたご遺族の皆様には、委員会として厚く御礼を申し上げたい。
 委員会においては、調査結果に基づき原因究明を行い、事故の再発防止策を提言としてまとめた。提言にあるように、鳴門病院においては、今後とも事故の再発防止に向けた取り組みが必要である。鳴門病院職員は、一丸となって、安全で確実な医療の提供を念頭におき、地域住民の医療に関する不安を取り除くことに努力し、社会の信頼を回復していかなければならない。また、再発防止の取り組みが適切になされているか否かについて、健康保険鳴門病院が本事故を忘れないようにと患者さんが亡くなられた11 月18 日に設定した医療安全の日を中心に、適正な監査が実施されなければならない。
 今回の誤投薬事故を重大な契機として、鳴門病院は、地域住民の意見とニーズを真摯に受けとめ、地域住民から信頼される、住民本位の基幹病院としての使命を果たしていくように、本委員会は強く要請する。

 ご家族に参加していただいて、論議を進めた医療事故調査委員会が他にもあるのかどうか私は知らない。不幸な事故を受け、医療安全に不退転の決意で取組んだ鳴門病院の真摯さに敬意を表する。厳粛な気持ちで、事故報告書を読ませていただいた。


 誤投薬事故報告書が公表された同じ日に、当事者となった医師が書類送検された。報告書には、当日の職員の行動が細かく記載されている。場合によっては、報告書が裁判の証拠として使用される可能性がある。しかし、健康保険鳴門病院が報告書をホームページ上に公表したことにより、問題がシステムエラーにあることが明らかになった。医師個人の刑事責任を問うことは、どう考えても無理がある。


 ご家族の心情について、次のような報道があった。

 妻によると、内科医は平身低頭謝り、誠意が感じられた。08年12月、妻は「めげずに頑張ってほしい」と書いた手紙をそっと内科医のポケットに入れた。内科医からも便せんいっぱいに感謝の気持ちが書かれた手紙を受け取ったという。妻は「夫の死を無駄にせず、夫を忘れないでほしい。そして、立ち直ってほしい」と静かに話した。

http://mainichi.jp/area/tokushima/news/20090821ddlk36040466000c.html


 ご家族の処罰感情が薄れている状況で、「厳重処分」の意見をつけて送検した徳島県警の姿勢に強い違和感を覚える。