市町村もケアマネも審査会委員も皆怒っている

 第3回要介護認定の見直しに係る検証・検討会議事録より、高見国生氏(社団法人認知症の人と家族の会代表)の発言を紹介する。

○高見委員 今の石田委員も、それからケアマネ代表の木村委員も非常に上品な方ですので上品に御意見を言っておられると思いますが、私が知っている限りでは、市町村もケアマネも、それから審査会委員も皆、混乱させられて怒っているんです。そこが、やはり正直なところだと思うんです。非常に混乱したということで怒っていますので、私は石田委員さんに成り代わって市町村は怒っている、あるいはケアマネの皆は怒っていると申し上げたいと思うんです。
 それで、木村委員のアンケート結果の中でも、要するに判断が難しい、判断に迷うことがないように具体例をと書いてありましたけれども、今も言いましたようにケアマネの多くの人はこういう調査の仕方では正確に反映しないという意味で怒っているのであって、判断に迷うというふうな意見は私の知っている限りは聞いていません。
 そういう意味で、私の知っているケアマネの皆さんと木村委員がおっしゃるケアマネの委員の意見とは少し違うように思うんですけれども、いずれにしましても資料5で出されました修正内容ですね。これは、結城委員の調査でも数は少ないですが、かなり有効だというふうなデータが出ていますし、私たちもさっき樋口委員がおっしゃった1,000万人の輪でもこのことについては問題を指摘して要望しましたし、私が所属している家族の会でも前回説明しましたように非常識であるとか、認知症への無理解であるとか、具体的に項目を挙げて問題点を指摘してきました。
 そういう意味で言いますと、私たちが本当に現場で介護当事者として感じてきた今回の調査方法の変更の問題点について、おおむね厚生労働省案でもそれを受け止めていただいて、修正の方向を示していただいたと思います。
 それで、4月の段階で幾つかの項目について一部見直しをしていただきましたし、それから経過措置をしていただいた。これについても私は前回も言いましたけれども、本当に経過措置というのは思い切った措置でありまして、あからさまに言いますと厚生労働省はここまでやってくれるかと思いました。そういう意味で、今回の修正案についても本当に今までの4月の変更の経過とか、その時点での説明などを乗り越えて、私たちの意見にこたえていただいた。そういう意味では、内容的に私は大変いい修正案だと思います。


(中略)


 といいますのは、今回のそもそもの混乱の起こりは、やる前にその利用者とか現場の人たちに意見を求めなかったというところに大本の発端があると思いますので、新しい調査員テキストをつくるに当たって、またその二の舞いにならないように、テキストをつくるに当たってもよく関係者の意見を聞いていただくことが必要ではないかと思います。
 それで、さっきも言いましたように、市町村の人たちは大変怒っていますし、審査員も怒っていますから、早く修正案を決めて、修正案を決めれば自動的に経過措置は終わるわけですから、そんなふうなことでお願いしたいと思います。


 「要介護認定の見直しに係る検証・検討会」に提出された各種資料、および、議事録に再現された説明、いずれも簡潔にまとまっており、分かりやすい。これだけ膨大な資料を短時間のうちにまとめあげ、しかも、修正案のシュミレーションまで提示できたことひとつをとっても、厚労省官僚はきわめて優秀である。
 一方、計3回の議事録のどこにも、厚労省官僚自らが率直な反省を示す場面が見当たらない。そこに、強い違和感を感じる。厚労省官僚は、高齢化社会到来に伴う社会保障費増大を如何に減らすかだけを腐心してきた。介護保険利用者や介護事業従事者に顔を向けて仕事をしている訳ではない。高見国生氏が、「市町村もケアマネも審査会委員も皆怒っている」と指摘しても、全く反応がない。かろうじて、とりまとめ 要介護認定方法の見直しに係る検証を踏まえた見直しについてPDF:136KB)の中で、「一方、今回の見直しは、利用者・市町村の双方にとって大きな見直しであったにもかかわらず、事前の検証や周知が十分に行われたとは言いがたく、結果として現場の大きな混乱を招いた。この点、厚生労働省に対し、猛省を促したい。」と、検証・検討委員会がもの申す形で触れられている程度である。しかも、この文章自体、田中滋座長が加わって作成したものである。
 医療、介護、福祉、年金、雇用など国民の生活に密着する分野を管轄する巨大省庁、厚労省に自浄作用を期待するのは無理である。総選挙が行われている。政権交代後、厚労省の体質がどのように変わるのか注視したい。