覚醒剤使用者の更正

 現在は、第3次覚醒剤乱用期と言われている。平成20年 警察白書 PDF 第2章 組織犯罪対策の推進をみると、次のような状況になっている。

(1)覚せい剤情勢
平成19年中の覚せい剤事犯の検挙人員は前年より増加し、また、押収量は、粉末が前年より大きく増加した。
<19年中の覚せい剤事犯の特徴>
・ 暴力団構成員等の検挙人員が増加し、検挙人員全体の過半数
・ 来日外国人、特にイラン人及びフィリピン人の検挙人員が増加 
・ 再犯者が、検挙人員全体の過半数


 平成16年版 犯罪白書 第5編/第3章/第2節/4には、受刑者の状況が記載されている。

 覚せい剤新受刑者数は,30年に最初の山を迎えた後,長期間にわたって200人以下という時期が続いているが,これは,覚せい剤取締法が新たに制定され,同法律による取締りが実施されたことにより,第1次乱用期が比較的速やかに終息したことを示している。覚せい剤新受刑者は,40年代後半から再び急増し,54年以降は一貫して5,000人を超える水準で推移し,平成15年は6,774人となった。このうち昭和59年を頂点とする時期を一般に第2次覚せい剤乱用期と呼び,また,平成9年を一つの頂点とする時期を,現在を含め,第3次覚せい剤乱用期と呼んでいる。

 覚せい剤受刑者は,32年から47年までは年末在所人員の1%以下であったが,その後,著しく増加し,平成15年年末においては,受刑者6万851人のうち1万5,098人(24.8%)が覚せい剤受刑者であった。

 覚せい剤受刑者は,60歳以上の者が比較的少なく,また,近年においては,30歳代の者の比率が高くなる傾向が見られるなど,受刑者全体とは異なる特徴が認められる。

 覚せい剤受刑者については,初入者の比率は横ばいであり,異なった傾向が見られる。初入者比率が横ばいとなっているのは,依存者による再犯が後を絶たないためであると考えられるが,同時に,常に一定数の新たな使用者が生じていることもうかがわれる。


 覚醒剤事件は厳しく処罰すべきである。他の薬剤と比べても依存性が強く、乱用による精神症状に伴い各種凶悪事件を引き起こす。しかし、4人に1人が覚醒剤受刑者というデータは驚きである。
 さらに、覚醒剤受刑者教育に関し、次のような記載がある。

覚せい剤乱用防止教育が目指すもの
 覚せい剤は依存性が高く,ひとたび依存に陥ると,そこから抜け出すのは簡単ではないといわれています。
 覚せい剤をやめるためには,なぜ覚せい剤がいけないのかを理解するとともに,自分が依存に陥っていることに気付き,心から「やめたい」という強い気持ちを持つことが必要です。しかしながら,覚せい剤事犯者の多くは,「自分は覚せい剤をやめることができる。」と考えていて,自分が依存に陥っていること,つまり,簡単にはやめられない状態にあることに気付いていないといわれています。そのような考えを捨てて,「覚せい剤をやめるのは簡単なことではない。本気で努力しなければならない。」と自覚することが,覚せい剤と縁を切るための第一歩になるのです。
 現在,覚せい剤乱用防止教育は,ほとんどの刑務所で行われていますが,このような「依存」に気付かせるための働き掛けとして,「グループワーク」を取り入れる施設が増えています。グループワークでは,10人程度の少人数のグループを編成し,覚せい剤依存者同士が,覚せい剤を使用するときの気持ち,状況,覚せい剤を使用して得たもの,失ったものなどについて話合いをします。そして,受刑者は,それを通じて依存の事実を認めるようになり,乱用のために多くのものを失ったことを自覚し,自分が何をしなければならないのか理解することが期待されるのです。
 覚せい剤乱用防止教育の効果を,目に見えるような形で示すのは難しいことです。覚せい剤を本当にやめることができた人は,刑務所に戻ってきませんので,その人から話を聞いて確かめることができないからです。また,1度覚せい剤乱用防止教育を受けただけでは目立った効果の上がらない人もいます。しかしながら,できるだけ多くの覚せい剤受刑者に対して,自らの依存問題に取り組むきっかけを与えることが重要であり,そのための努力は効果を上げているはずです。刑務所では,薬物依存から離脱させるための教育プログラムを充実強化するとともに,民間の薬物離脱支援団体を含めた関係機関などとの連携を図り,覚せい剤乱用防止教育の効果をより一層高める努力を続けています。


 –ƒ–òEŠo‚¹‚¢Ü“™‚ÉŠÖ‚·‚éŽÀ‘Ô’²¸‚ÌŠ©‚É”º‚¤‰ü‘P‘[’uó‹µ‚ÌŠT—vをみると、薬物依存・中毒者の社会復帰対策が確立されておらず、リハビリテーション施設は民間の施設のみとなっている。なお、本調査は1997年(平成9年)に行われたものである。
 覚醒剤犯罪の予防と覚醒剤使用者(起訴猶予を含む)の更正は車の両輪である。仕事や家庭を失い、社会から阻害されたままでは、また、同じ過ちを繰り返す。しかし、更正=リハビリテーションに関する取組みは刑務所と民間施設に頼っているのが現状である。罪を償った覚醒剤使用者を社会に最適合させるための取組みを如何に進めていくか、私達自身の身近な問題としてとらえなければいけない時代となっている。