岩崎恵美子氏の発言、新型インフルエンザ騒動以前から一貫

 仙台市副市長岩崎恵美子氏の発言は、新型インフルエンザ騒動以前から全くぶれていない。2008年9月4日に行われた第18回定例朝食会「仙台市新型インフルエンザへの取り組み」 (岩崎恵美子先生) : 日本医療政策機構より、印象に残った言葉を抜粋する。

 まず、日本が抱える問題として、感染症に対する正しい理解に基づく系統的な対策がとられていないことが挙げられる。何かが流行すると大騒ぎして、一つずつマニュアルを作っている、これが現状なのだ。

 ウイルスは空気中を舞ってくることは殆どなく、唾液などの分泌物を介して伝わる。こういったものと接する「生活習慣」が大きく関与しているのだ。

 時代の背景が全く異なることに留意しなければならない。主に栄養の足りない兵士の間で流行したスペイン風邪の事例を現代にそのまま当てはめるのは早計である。また、スペイン風邪で亡くなった方の殆どが混合感染によるものだろうという話もある。

 新型インフルエンザが怖いのは医師も一緒である。しかし、誰かがやらないと患者を救うことはできない。私はタミフルの用意を確保するという条件で、仙台市医師会を説得し、インフルエンザ対策に取り組んでもらうことを約束して頂いた。

 怖がらずに誰かが対応しなければならない。対策にやる気のある医師が仙台市にいることはとても幸いなことだと思っている。

 自治体が考えるべきことは感染が拡大しないようにするための策であり、時には強引に小学校を休校にするといった強制的な措置を取る必要もあるだろう。ライフラインに関連する企業の人たちに感染が及ばないようにするためにも、まずは小学校で止めなければならない。小学生は体力がないし清潔不潔の概念もない。

 英国の有名な医学雑誌であるLancetに掲載された論文において、手洗いしない群、普通の石鹸で手洗いする群、薬用石鹸で手洗いする群の3つに対して感染の冬場の上気道感染の数を調べたら、手洗いしない群においてのみどんどん感染が増加し、普通石鹸でも薬用石鹸でも手洗いしている群の感染は低く抑えられていた。このようなデータからも手洗いの重要性がわかる。当たり前だが大切な基本的なことが大切だ。

 SARSやエボラと違ってインフルエンザは感染力が強く潜伏期も短い。仙台市では「発生したとわかった時点では既に広がっている」と判断して、対策を始める体制にある。

 情報を出す時は必ず対応策を付けて出すように私はいつも指導している。手を洗う、人ごみに行かないようにするなど、どういう対応が必要かを付けた上で、状況を説明することが不可欠だと思う。メディアとの協力も進めているが、しつこく対策を載せてほしいということをお願いしている。情報提供と対策を必ずセットにすることを徹底したい。

 情報提供は一朝一夕にできるものではないことを強く認識している。一人ひとりが特に心がけてほしいのは、予防には生活習慣を身につけることが大事だということだ。それをやるには繰り返しが不可欠である。小学校での講演、町内会での話など、何かの機会があるにつけて我々はしつこく情報を提供している。

 発熱外来に行く人は恐怖心を持っている人だけで、普通の人は普通の開業医のところに行ってしまう。だから、開業医と連携することが必要となる。そのために、医師会に対してバックアップ体制をとることをしっかり保証し、タミフルの準備、後方の支援病院の確保なども我々が確実に行い、医者を支える心づもりでいる。


 当たり前のことを、コツコツと準備することが未知の感染症対策にとって最も重要であることが良く分かる。仙台市民は良きリーダーを持っていることに感謝しなければならない。