算定日数上限問題と成果主義に関する報道

 リハビリテーション算定日数上限問題に関する報道がなされた。

コストカットの現場で/3 リハビリ 保険適用日数に上限


 ◇「成果」のため患者選別も
 脳出血で手術を受けた後、左半身にまひが残り、兵庫県西宮市の病院でリハビリをしていた同県芦屋市の男性(62)は08年6月、病院から「180日の日数制限があるので、あとは自宅療養を」と言われた。


 リハビリの意欲が強かった男性と家族は受け入れてくれる病院を探し、7月に同県篠山市の兵庫医科大篠山病院へ入院。歩行訓練などを続け、約4カ月後には装具とつえを使って室内歩行ができるまでになった。男性は「あきらめないでよかった」と振り返る。


 厚生労働省は、寝たきり防止と家庭復帰を目的に発症6カ月後ごろまでに行う「急性期」や「回復期」のリハビリについて、医療保険が適用される上限日数を定めている。脳卒中など脳血管疾患180日▽骨折など運動器疾患と、急性心筋梗塞(こうそく)など心大血管疾患150日▽肺炎など呼吸器疾患90日‐‐だ。


 改善が期待できると医師が判断した場合は上限を超えたリハビリが認められ、厚労省保険局医療課は「必要なほぼ全員がリハビリを受けられる」と説明する。だが、兵庫の男性のようなケースはなくならない。


 篠山病院リハビリテーション科の新井秀宜医師によると、180日を過ぎても、「年齢が比較的若い」「患者だけでなく、家族もリハビリに意欲的」などの患者は改善する余地がある。この基準にあてはまる患者にリハビリをすると、改善がみられるケースがほとんどという。


 男性の妻(61)は「別の病院にも受け入れを断られた。リハビリは機能後退を防ぐ意味もあるので、期限は設けないでほしい」と訴える。


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 リハビリでは、08年度の診療報酬改定で導入された「成果主義」も暗い影を落とす。新規入院患者の1割5分以上が重症患者▽在宅復帰率6割以上−−などの条件をクリアした病院は、より多くの診療報酬を得られる仕組みだ。


 医療関係者からは「成果を上げやすい患者が優先的に選ばれる恐れがある」との声が上がる。実際、日本リハビリテーション医学会が08年、リハビリの専門医ら400人を対象に行った調査では、回答した約220人のうち13%が「患者選別を行っている」と答え、「行う可能性はある」との回答も31%に達した。


 兵庫医科大の道免和久教授(リハビリテーション医学)によると、大学から地域の病院にリハビリ患者を送ろうとしても、重症患者や家族がいない患者は断られるケースが出始めている。受け入れ基準が厳しくなったと感じる病院が少なくないという。


 道免教授は「患者は一人一人で対応が異なる。医療で大事なのは個別性だ。一律に上限を作らず、必要な医療を受けられるようにすべきだ。医療の世界に成果主義を持ち込むと、医療そのものが崩壊してしまう」と主張する。


 厚労省は「必要な患者に医療費を集中できる」と、日数の上限や成果主義の意義を強調している。=つづく


毎日新聞 2009年4月3日 東京朝刊

公文書クライシス - 毎日新聞


 算定日数上限問題、回復期リハビリテーション病棟への成果主義導入問題、いずれも本ブログの中心課題として主張してきた。両問題を正面から取り上げていただいたことに感謝したい。