要介護認定、凍結を求める意見広がる

 要介護認定に対し、凍結を求める意見が広がっている。
 昨日、「認知症の人と家族の会」が2009 年4月実施予定の要介護認定方式についての意見(2009年3月9日)を出したことについてご紹介した。
 「介護保険を持続・発展させる1000万人の輪」も同様の懸念を示し、厚労相に要望書を提出した。

介護認定基準の変更凍結を 厚労相に団体要望


 高齢の親らを介護する家族や事業者、有識者でつくる「介護保険を持続・発展させる1000万人の輪」は12日、4月に予定されている要介護認定基準の変更を凍結し、認定方法を再検討するよう求める要望書を舛添要一厚生労働相に提出した。


 「1000万人の輪」共同代表で評論家の樋口恵子さんらは提出後の記者会見で、基準変更について「要介護度を実際より軽く認定し、給付費を減らそうと狙っているのではないか」と指摘。「介護にかかる手間や時間、認知症の程度を正確に認定できるか疑問だ」と強調した。


 現在、高齢者に介護が必要かどうかは市町村が派遣する調査員が調べ、審査会が認定する。厚労省は4月から、現在82ある調査項目に6項目追加した上で14項目を削除し、74項目に削減する。


 樋口さんらは、追加された「買い物」の項目では、毎日のように不必要な物を買う認知症特有の行動があっても「自立して買い物ができる」と機械的に判定され、問題だと主張している。

http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009031201000733.html


 介護保険を持続・発展させる1000万人の輪 メールマガジン 2009年3月12日に要望書の内容が詳しく紹介されている。厚労省コメントは次のとおりである。

要望書提出後の会見での、厚労省コメント(坂本審議官)
(メルマガ編集人が記者会見準備のため中座したため、以下は同席のUIゼンセン同盟日本介護クラフトユニオン 村上久美子氏に作成いただきました。)
1. みなさんは、いつも厚労省に要請に来られるが、市町村に要請されたことはあるのか。
 介護保険地方分権であるはずが、それが進んでいない。運営は市町村であるにも係わらず、まるで厚労省老健局が運営しているよう。
 介護保険制度を全国に広げるため、厚労省が主導になったが、地域社会の欠損という観点からこのことを意識しなければならないのは市町村である。
2. 介護の質の向上の評価ということであるが、個々でキャリアアップに関することや研修やらを一生懸命やっている事業者がある。それに報いてあげなくてはならない。一生懸命やっている事業者には加算が反映できるように設定した。大体、8, 9割の事業所に反映できるのではないか。
 また、介護報酬が加算されるということは利用料も加算されるということ。利用者はサービスが向上したという形でないと、利用料の加算が納得できないのではないか。
3. 要介護認定について。現在、新規申請者、2年での再申請者、重軽度の変更申請者を合わせると、高齢者人口より高い数字になり、認定調査だけでも大きな件数増となっている。そこで、一時判定を簡素化して二次審査で吸収していくように考えている。
 介護保険制度を安定的に維持するためにどうするのか、ということを考えていかなくてはならない。
 実際にやっているのは市町村である。何か問題なら言ってくるだろう。不服申し立て制度があるので、それを強化する形で運用していく。


以上


 厚労相官僚は、介護保険の問題点を市町村に問うべきと強弁している。また、要介護認定システムの不備を介護認定審査会に押しつけるつもりである。いつもながら、厚労省官僚は保身の感覚にたけている。制度設計の責任を果たすつもりはないらしい。今回の要介護認定システム変更は、利用者とその家族にとって不利益となるだけでなく、市町村にとっても、認定審査会委員にとっても、迷惑千万である。