こんにゃくゼリー窒息事故で、マンナンライフ訴えられる

 ミニカップ入りこんにゃくゼリーによる窒息事故で、マンナンライフが訴えられている。

こんにゃく入りゼリー死の男児両親、慰謝料など求め提訴


 兵庫県内の1歳9か月の男児が、こんにゃく入りゼリーをのどに詰まらせて死亡した事故で、男児の両親は3日、「製品の欠陥が原因」として、製造した「マンナンライフ」(群馬県富岡市)と同社役員2人に慰謝料など約6200万円を求める訴訟を神戸地裁姫路支部に起こした。


 訴状などによると、男児は昨年7月29日、凍らせたこんにゃく入りゼリーをのどに詰まらせ、9月20日に多臓器不全で死亡した。


 原告側は、製品には、〈1〉ちょうどのどをふさぐ程度の大きさ〈2〉かみ砕いたり、のみ込んだりしにくい――などの欠陥があるとして、製造物責任(PL)法に基づく賠償を求めている。


 訴えに対し、マンナンライフは「真摯(しんし)に対応していきたい」としている。


 国民生活センターによると、こんにゃく入りゼリーによる同種の死亡事故は1995年以降、少なくとも17件。うち2007年3月、三重県で7歳の男児が死亡した事故では両親が、別のゼリー製造会社を提訴、和解が成立している。


(2009年3月3日22時43分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090303-OYT1T01100.htm

遺族がマンナンライフを提訴 こんにゃくゼリーで窒息死


 名古屋市の女性=当時(87)=が、こんにゃくゼリーをのどに詰まらせ窒息死したのは製品安全性を欠いていたためとして、女性の長女(60)=名古屋市=が4日までに、製造した「マンナンライフ」(群馬県富岡市)に2900万円の損害賠償を求める訴えを名古屋地裁に起こした。


 訴状によると、2005年8月、女性はゼリーをのどに詰まらせ、呼吸不全で死亡。女性は脳出血による半身まひだったため、長女が容器を開けて食べさせたという。


 原告側はゼリーは弾力性が高く、一口で口に吸い込む容器構造だったため、のどに詰まりやすかったなどと指摘。「警告表示も不十分で安全性を欠いていた」とした。


 同社によると、1991年にミニカップタイプのゼリーの販売を開始。昨年10月には製造を一時停止し、ゼリーの弾力性を低くし、警告マークを拡大して同11月に製造を再開している。同社は「弁護士を通じて対応しており、詳細はコメントできない」としている。


2009/03/04 12:20 【共同通信

http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009030401000304.html


 この2つの提訴に対する反発がネット上で散見される。以前記載した、窒息事故を予防するために(2008年11月2日)というエントリーをもとに、意見を述べる。


【ミニカップ入りこんにゃくゼリー窒息事故提訴に関する意見】
 窒息に伴う重大事故を予防するためには、ハイリスク群を同定することが求められる。厚労省の調査結果をみると、子ども(特に乳幼児)と高齢者、および脳卒中後遺症などの基礎疾患を持っている者に対し、集中的対策をとる必要がある。


1.子どもの窒息事故予防
 子ども、特に乳児(0歳)および幼児(1-4歳)では、窒息事故による死亡が多い。0歳では「不慮の事故」による死亡者106人中「その他の不慮の窒息」が85人80.2%に達している。1-4歳においても「不慮の事故」80名中「その他の不慮の窒息」26名32.5%となっている。
 乳幼児は摂食機能が未熟であり、安全な食物が何であるか判断することはできない。したがって、保護者が責任を持って、窒息を起こしやすい食物を遠ざける必要がある。特に、ミニカップ入りゼリー(こんにゃくゼリーを含む)、飴玉、ピーナッツなどの豆類の3つは、乳幼児に食べさせてはいけない。


2.高齢者など摂食嚥下機能低下者の窒息事故予防
 高齢者は加齢に伴い、嚥下機能が衰える。歯牙を失い、咀嚼能力が低下する。また、脳卒中後遺症、神経筋疾患患者、重度心身障害児などでは、摂食嚥下機能が低下することは稀ではない。
 摂食嚥下機能低下が重度になった場合、食事内容、体位、介助法などの工夫を行う。摂食嚥下機能低下者への食事介助は、窒息事故という危険がつきまとう。介護者の力量向上が不可欠である。


3.ミニカップ入りこんにゃくゼリーそのものの問題
 ミニカップ入りこんにゃくゼリーは弾性が強く、かたい。ミニカップから吸いこむという食べ方をするため咽頭に入りやすく、窒息事故を引き起こす。
 これまでも、「小さい子どもや高齢者が食べると危険」という表示をつけるなどの対策を業界はとってきたが、事故が続いている。「こんにゃくゼリー」という通称に含まれている「ゼリー」という言葉が、安全な食べ物であるという誤認を招いている。
 ミニカップ入りこんにゃくゼリーは、歴史がまだ浅いが、日本のこんにゃく文化に根づいたものであり、根強い愛好者がいる。ただし、弾性が強くかたいという物性、ミニカップ入りという形状、そして、ゼリーという誤認しやすい名称が窒息事故を誘発しており、安全性の点から見て未完成のものといえる。今後、長く愛される菓子類であり続けるためには、物性、形状、名称の変更を断行する時期になっている。少なくとも、ミニカップ入りという形状は捨て去るべきである。


 食品会社が安全性向上の努力をすることは当然である。しかし、不慮の窒息事故の全責任を製造業者に負わせることは適当ではない。今回は、1歳9ヶ月の幼児と、脳出血後遺症で食事介助が必要な87歳の高齢者が窒息事故の犠牲者となった。いずれも窒息ハイリスク群である。食品の属性を把握し、窒息事故を避ける努力が保護者、介助者側にも求められる。