介護保険財政は、利用抑制の結果黒字に

 介護保険財政は、利用抑制の結果、黒字となっていた。

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「脳卒中難民」の悲劇(2008年12月7日)


 まずは、https://www.cabrain.net/news/article/newsId/19585.html(2008年12月9日)より。

介護保険財政、過去最大の黒字−東京23区など


 2006年度の介護保険法「改正」でサービスの給付抑制が強まり、東京都の特別区(23区)と26市では、介護保険特別会計の収支が過去最高の216億円の黒字だったことが、東京民主医療機関連合会(東京民医連)の調べで明らかになった。23区と26市では、同特別会計が2000年度の制度発足以降、黒字で推移しており、東京民医連では「介護サービス給付費の伸び止まりとともに黒字傾向が顕著になっている。必要なサービスが抑制されている表れであり、来年の介護保険法『改正』で、保険料を引き上げる必要はない」と強調している。


 介護保険は、一般会計(普通会計)とは別に特別会計で運営されており、東京民医連は、都の62自治体のうち23区と26市の介護保険特別会計を調べた。その結果、23区について06年度の介護サービス給付費の予算と決算を比較すると、予算に対する執行率は平均92.7%で、当初予算と決算との差額は276億円だった。


 また、23区と26市を合わせた2000年度から06年度までの収支を調べたところ、毎年黒字で推移し、特に06年度は、前年度(109億円)の2倍近い216億円の黒字だったことが分かった。東京民医連では「06年度の『改正』で介護保険料が25%引き上げられたにもかかわらず、介護サービス給付費の前年度比伸び率は1%増にすぎず、介護保険の利用の伸びが頭打ちとなっている。黒字はサービスの給付抑制の結果であり、保険料を上げなくても介護サービスを充実させることが可能」と指摘している。


 各自治体では、介護保険事業の費用に不足が生じた場合に備え、「介護保険給付費準備基金」を設けているが、同基金は06年度で、23区が176億円、26市が56億円の計232億円の残高があることも分かった。また、自治体の介護保険特別会計の財政が悪化したときに、都が交付したり貸し付けたりする目的で積み立てている「東京都介護保険財政安定化基金」については、2000年度の59億円から06年度には214億円に増え、08年度は233億円になると見込まれている。


(後略)


 引き続き、https://www.cabrain.net/news/article.do?newsId=16786&freeWordSave=1(2008年6月25日)より。

介護保険の国庫負担は「黒字」


 財政難を理由に、財務相の諮問機関「財政制度等審議会」が、2009年度予算編成に向けた建議(意見書)で、介護保険制度について「利用者負担や公的保険給付の範囲の見直しなどを含め、さらに検討を深める必要がある」などと求めている。しかし、介護給付費の国庫負担は、2007年度で約900億円、06年度で約1400億円の“余剰金”が出ており、財政が逼迫(ひっぱく)しているわけではない。“余剰金”については、「介護サービスの給付を厳しく抑制している結果」と指摘する関係者が多い。こうした現状で、介護給付費に対する国庫負担を削減する必要があるのだろうか。(山田 利和)


(中略)


 この“余剰金”については、民主党山井和則衆院議員が今年の通常国会で取り上げた。山井議員は、深刻になっている介護現場の人材不足を解決するため、「予算で見込んでおきながら、実際には使われなかった費用などを活用すれば、介護職員の賃金引き上げが可能ではないか」などと政府・与党を追及。しかし、07年度の“余剰金”は、「消えた年金」の特別便対策や「後期高齢者医療制度」の自己負担の凍結に使われたことが判明している。


(後略)


 「脳卒中難民」の悲劇(2008年12月7日)にて、「介護給付費が抑制された結果、多額の余剰金が出ている」という内容の週刊文春の記事を紹介した。CBニュースを見る限り、東京都の自治体負担、国庫負担いずれにおいても介護保険財政は黒字となっている。文春の記事には根拠があったことになる。
 この余剰金は、必要なサービスを受けられない要介護高齢者と低賃金にあえぐ介護労働者の犠牲の上に作られた。来年度、要介護認定の仕組みが変わる。また、介護報酬改定がある。「持続可能な制度設計」としたとされる2006年度介護保険見直しが踏襲される。介護保険制度は保険あって介護なしという事態に陥りつつある。