首切り発ホームレス行き「たらい回し」が始まった

 ホームレスのたらい回しが始まった。http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2008120502000256.html?ref=rankより。

ホームレスに「名古屋行って」 周辺自治体、苦渋
2008年12月5日 夕刊


 解雇で寮を追われ、ホームレスになった派遣社員の人たちが、愛知県内外の各自治体窓口へ相談に訪れた際、「名古屋市に行けばいい」と電車の切符を渡され、名古屋市へ転送されるケースが増えていることが分かった。ホームレス受け入れ施設があるのは愛知県内では名古屋市しかないためだが、市は「たらい回しだ。自分のところで対応して」といらだちを隠せず、県を通じて各自治体に抗議している。


 市の臨時調査によると、先月17日からの10日間に各区役所を訪れ、「職と家がない」などと相談したのは32人で、「トヨタ・ショックの影響があり増えている」(市保護課)。このうち6人が直前まで県内の市に住み、各自治体から切符を支給されて名古屋入り。うち2人は自分の意思で名古屋を目指したが、残りは「名古屋に行けば一時保護所があるから」などと示唆され、来名した事例だという。


 32人の中には、岐阜、三重など近県から名古屋市に来た人が20人いる。市が委託運営するホームレスの自立支援施設の関係者は「最近、岐阜県内のある市の職員から直接、『送るので受け入れてもらえないか』という電話があった。いいかげんにして」と話す。


 こうした施設は国と名古屋市が事業費を折半する形で運営している。これまで愛知県内のホームレスの8割以上が名古屋市にいたことから、同市に重点的に整備されてきた。市保護課は「市民の税金で運営する以上、まったく名古屋にいなかった人を受け入れるのは、本来望ましくない」という立場だ。


 従来、自動車製造業を中心に求人が活発で、ホームレスも少なかった三河地方の各市は、受け入れ施設が未整備のまま。「今晩泊まるところがないという方が相談に来ても、ごめんなさいと言うほかない」(豊田市)というのが実情だ。


 このため「決して市が主導して名古屋に行きなさいというつもりはないが、『どこかで今日泊まれるところはないか』と言われれば、『名古屋にはこういうのがある』と答えざるを得ない場合もある」(豊橋市)ということになる。


 愛知県は名古屋市からの抗議を受け、県内外各自治体に対して簡易宿泊所の確保や生活保護の適用などを通して、名古屋への「たらい回し」をしないよう要請。今後、さらに非正規雇用者の解雇増加が見込まれることから「県としても、すぐに宿泊ができるような仕組みを考えたい」(地域福祉課)としている。


 アメリカ発金融恐慌が、日本の雇用情勢を脅かしている。派遣社員期間工に頼っていた自動車製造業で雇い止めが始まり、失業した労働者がホームレスになる。しかし、中小自治体にはセーフティネットとなる施設がなく、名古屋などの大都市へホームレスをたらい回しにする構造ができあがりつつある。


 http://www.news.janjan.jp/living/0812/0812042925/1.phpを見ると、職と同時に住まいを失う労働者の悲惨な状況があらわにされている。


 何よりも雇用の確保が急務である。それと同時に、短期対策として職を失った労働者の住まいと食事を確保しなければならない。派遣労働者の場合には、雇用保険にも加入していない場合が多く、状況はより深刻である。
 対策を自治体だけに任せるべきではない。政府として早急に対応策を立てることが求められる。何よりも、大量に首切りを行ったトヨタなど大企業の社会的責任は重大である。いきなり仕事を奪い、この冬の寒空に寮から追い出すという非道を許してはならない。


 救急医療の不備を指摘する言葉として、「たらい回し」が誤用されてきた。「医療崩壊」の一現象である救急患者の「受け入れ不能・困難」という実態を、医療側が怠慢であるかのようにすり替えた。「たらい回し」という言葉を聞くと、嫌悪感を覚えてならない。
 今回、ホームレス問題で「たらい回し」という用語が、初めて適切に使用されたように思う。ホームレス「たらい回し」が生じた最大の責任は、中小自治体にはなく首切りを行った大企業にあることを、中日新聞の記事は示している。雇用を守る努力をせず、失業者を大量に生み出し、その後始末を自治体に負わせようとする姿勢は、自らが述べている企業の社会的責任の遵守という姿勢からかけ離れている。現在の事態はまさに、首切り発ホームレス行き「たらい回し」である。この列車には往復きっぷはない。