所得税と異なり、社会保険料は低所得層ほど負担率が高くなる傾向がある。特に、国民健康保険で逆進性が顕著となっている。滞納世帯増加のため、国民健康保険証のない子どもが増えていることが報道され、社会問題化している。
http://sankei.jp.msn.com/life/welfare/081030/wlf0810302155003-n1.htmより。
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国民健康保険証ない子供3万人 厚労省調査
2008.10.30 21:54
厚生労働省は30日、国民健康保険(国保)の保険料を滞納したため保険証を返還し、代わりに「資格証明書」を交付された“無保険世帯”は全国約33万世帯で、このうち中学生以下の子供が3万2903人に上っていたとする調査結果をまとめた。厚労省が“無保険”の子供数を全国調査したのは初めて。
調査は9月に行われた。国保加入世帯のうち保険料を滞納しているのは、全体の18・5%にあたる約384万世帯。資格証明書を交付された約33万世帯のうち、1万8240世帯に中学生以下の子供がいる。
厚労省は、地方自治体に対し、実情をよく把握し、可能な限り短期間有効な保険証を交付することなどを通知した。
国保では、病気や失業といった特別な事情なしに、世帯主が保険料を1年以上滞納した場合、自治体の判断で保険証と引き換えに資格証明書を交付する。資格証明書で医療機関にかかると、医療費をいったん全額支払い、後ほど自治体に保険分を還付してもらわなければならなくなる。
このため、受診抑制が起こり、子供が必要な治療を受けられなくなっている可能性があるとの指摘が出ていた。
厚労省の当日発表資料はこちら。
国民健康保険実態調査 平成17年(報告)の表16 世帯の所得階級別保険料(税)調定額等の状況に次のような数値が並んでいる。
1世帯当たり額 円 | 所得に対する割合 % | |
---|---|---|
総数 | 142,803 | 8.5 |
所得なし | 25,836 | |
-30万円 | 31,041 | 20.7 |
30-40万円 | 44,534 | 12.9 |
40-60万円 | 62,266 | 12.4 |
60-80万円 | 85,592 | 12.2 |
80-100万円 | 104,824 | 11.6 |
100-150万円 | 137,637 | 11.0 |
150-200万円 | 180,245 | 10.4 |
200-250万円 | 223,341 | 10.0 |
250-300万円 | 261,694 | 9.6 |
300-400万円 | 323,485 | 9.4 |
400-500万円 | 406,959 | 9.2 |
500-700万円 | 480,794 | 8.2 |
700-1000万円 | 520,114 | 6.3 |
1000万円- | 512,833 | 2.1 |
政府管掌健康保険(協会けんぽ)の保険料率は8.2%であり、それを労使折半する。したがって、被保険者あたりの保険料は4.1%である。国民健康保険では、1000万円を超える高所得者以外はこの値を大きく上回る。しかも、低所得者層ほど所得に占める割合は高くなる。医療保険以外の社会保険料(国民年金など)が加わると負担感はさらに重くなる。
日本は小さすぎる福祉国家、低負担・低福祉国家と、直前のエントリーで指摘したが、それはあくまでも日本全体を見回した場合のことである。国民健康保険料を払えない無保険世帯が2割弱もいることを忘れてはいけない。