後期高齢者の入院場所の削減

 CBニュース、後期高齢者医療制度で講演会より、澤田石先生の講演部分を引用する。

後期高齢者医療制度で講演会


 NPO法人特定非営利活動法人)「医療制度研究会」(理事長=中澤堅次・済生会宇都宮病院院長)は9月28日、「後期高齢者医療制度はなぜ評判が悪い?−現場から問題を探る−」と題する講演会を行った。


(中略)


 鶴巻温泉病院の回復期リハビリテーション病棟に勤める澤田石順医師は、脳卒中認知症後期高齢者の患者は、リハビリが受けにくくなると訴えた。
 回復期リハビリ病棟で、自宅などへの退院率が6割未満となれば、10月から入院料が減額されるため、病院が後期高齢者らの入院を制限するようになると説明した。
 さらに、急性期病院での入院が長引くなどして、回復期リハビリ病棟(発病後60日以内の入院が必要)に入れない患者でも、これまでは障害者病棟などに入院させてリハビリを行っていたが、認知症脳卒中の患者は、10月に障害者病棟と特殊疾患病棟の入院対象から除外されると指摘。
 その上で、「後期高齢者特定入院基本料」の診療報酬見直しの厚生労働省通知が9月5日に出されたことで、一般病棟ならば、一定条件をクリアすれば、診療報酬の減額は免除されるが、障害者病棟と特殊疾患病棟は対象外で、リハビリから排除される患者が出てくるとした。
 澤田石氏は、自院のリハビリ病棟に来る重症患者が増加しており、「160人いる病棟の死亡率は、以前は2%だったが、制度が始まった今年4月から8%に上がった」と報告。後期高齢者医療制度は、在宅医療・介護の充実策も取らずに、医療費の削減を目指し、後期高齢者の入院場所の削減に向かっていると訴えた。


 澤田石先生のホームページ、厚労省の棄民政策(リハビリ関係の「質の評価」等と後期高齢者医療制度)を一挙に粉砕しよう内に、本講演のスライドがある。後期高齢者特定入院基本料の見直しまでの運動が分かりやすくまとめられている。


 経過措置が終わり、10月1日より、回復期リハビリテーション病棟入院料への成果主義導入、障害者施設等病棟と特殊疾患病棟からの脳卒中患者と認知症患者の除外が始まった。経営的打撃を最小限にするため、生き残りをかけて医療機関は苦闘している。その影で、不十分な治療しか受けられない脳卒中認知症患者が着実に増えていく。
 リハビリテーションの適応がないと言われ、あきらめてしまう患者の中に驚くほどの回復を見せる者も少なくない。経鼻経管栄養、気管切開、持続する意識障害で入院した患者でも、経口摂取が可能となり歩行が自立して退院する例もある。「寝たきり」患者の中には適切な評価を行えば治療効果があがる者がいる。このことを理解している病院は、積極的に重症者でも受け入れる。しかし、重症患者が多いと在宅復帰率がどうしても下がる。今回の診療報酬改定は、自宅退院できないような患者を多数受け入れている施設にペナルティーを与えた。
 現在の厚労省行政に失望と怒りを覚えている。厚労省官僚は、社会保障費削減を自らの責務と勘違いしている。財務省と喧嘩をしても、財源確保をしようとする気骨ある人物は厚労省にはいない。