「おろち」、本当に怖いのは人間

 本日、封切られた映画「おろち」を観てきた。


 実は、高い所とお化け屋敷が大の苦手である。小学校時代、窓ガラス拭きが嫌でたまらなかった。もし、落ちて死んでしまったらどうするんだ、といつも思っていた。お化け屋敷も怖かった。あまりにも恐ろしくてすぐに引き返して入り口から出てきたこともある。次に何が起こるか分からない、という不安な状態に置かれることに耐えられなかった。


 「おろち」も最初観ようかどうしようか悩んだ。なにしろ、「Jホラーの父」、「Jホラーの先駆者」と呼ばれている鶴田法男監督の作品である。途中で映画館から出てきたらみっともないなと思いながら、意を決して観にいった*1


 思った以上に怖くなかった(-。−;)


 考えてみたら、仕事柄、血は見慣れている。グロテスクなメイクにもさほど驚かない。そもそも、鶴田法男監督が、この映画を「女性の心の闇を描いたダーク・ファンタジー」と述べ、これまで作ってきたJホラーと一線を画している*2。監督が描きたかったのは、「人間が怖い」ということである。原作の楳図かずおの意図も同じである。絶望に苛まされ、最も親しい人さえも巻き込んで破滅していく人間の愚かさが描かれている。


 木村佳乃中越典子の共演には見ごたえが合った。おろちを演じた谷村美月もはまり役だった。そして、エンドロールで流れた主題歌「愛をする人」(柴田淳)が、何よりも良かった。悲劇的な結末を音楽をとおして希望へと昇華させた。これほど映画のテーマにあった曲はない。柴田淳ファンの1人として素直に嬉しさを感じている。