パラリンピック閉幕

 パラリンピックが終わった。本ブログでご紹介した選手たちの成績は次のとおり。


 義足のハイジャンパー、鈴木徹選手は惜しくも5位に終わった。彼の活躍について詳しく紹介している記事があった。China Radio International、<田邊 潤>パラリンピック 鳥の巣が揺れた 鈴木徹選手感動のジャンプ!(2008-09-18)より、引用する。

 私がパラリンピックで一番楽しみにしていた種目はなんと言っても陸上男子走り高跳び日本選手団の旗手を務めた片足義足のジャンパーで、2mの自己記録を持つ鈴木徹選手を見てみたいとずっと思っていました。片足義足で2m以上を跳んだ選手は世界で2人だけでその一人が鈴木選手です。私自身も専門にしていた種目で、鈴木選手の苦労が想像できるだけに、ぜひ応援したいと思っていました。


(中略)


 鈴木選手の試合の合間、私は後ろの席に座っていた日本チームの義肢装具製作者として有名な臼井さんにパラリンピックの難しさについてお話を伺っていました。同じ片足といっても膝がなければ運動制限が大きくあること、そして膝から下の骨が何センチ残っているかでも動きは大きく違うこと、現状のルールでは腕のない人と足のない人が同じ分類にされるので、高跳びの場合には義足の人が不利であること等の話を興味深く聞きました。話を聞きながら見ていると、確かに義足で1m90を跳んだ選手は鈴木選手と身長の高いアメリカの選手だけで、他の選手は片腕に支障のある選手ばかりでした。鈴木選手は膝から下の骨が短いため、やわかなゴムで包むようにして空気を逃がして義足を着けるのですが、夏は汗で滑ることも多く苦労するそうです。


 バーは上がり、1m93。鈴木選手は滑らかな助走から、さきほどの跳躍を再現するかのように見事なジャンプでこの高さをクリアー!! スタンドも大きく沸き、日の丸の小旗も振られました。そしてバーは1m96の高さへ。鈴木選手の今年のベスト記録は1m95でそれを超える高さです。1回目は義足のアメリカ選手と片腕のオーストラリアの選手がクリアー。鈴木選手は失敗。メダル争いは片腕の中国選手2名と鈴木選手に絞られたようです。そして、2回目に中国の一人の選手がクリアー。鈴木選手は僅かに触れる惜しい跳躍でしたが、2,3回目と失敗し、惜しくもメダルを逃しました。


 優勝したアメリカの選手は、義足の世界記録2m11cmをクリアーし、大歓声のうちに試合が終わりました。鈴木選手が今回クリアーした高さは1m93。アテネ大会の時の記録を9cm上回りましたが順位は5位で、臼井さんによると今回の北京パラリンピックは非常にレベルが高いということでした。優勝した選手の身長は1m95で、頭上16cmをクリアーしました。鈴木選手の身長は1m78で今回は頭上15cmのクリアーでしたが、鈴木選手は北京のひのき舞台で世界一の技術を示してくれたと思います。


 鳥の巣を出る時、私は福間先生とがっちり握手しました。福間先生は「北京に応援に来てよかった!」と笑顔で私の手を強く握ってくれました。私たちはスポーツがもたらしてくれる、順位や記録とは違った意味でのさわやかな感動を味わっていました。「支援してくれている方々への感謝の気持ちを自分のジャンプで表したい」と話す好青年の鈴木選手があの1m90の3回目。追い込まれた中で見せてくれた目の覚めるような素晴らしい跳躍は、この北京へ賭けた4年間の鈴木選手の思いと応援に来ていたご家族、そして指導している福間先生の気持ちがぴったりとかみ合った本当に素晴らしいジャンプでした。


 田邊潤氏の書かれた、<田邊 潤>パラリンピック 義足の進歩と選手の努力(2008-09-19 16)も興味深い。メダル争いにばかり目を向けがちなマスコミ報道より、ずっと読み応えがある。
 アスリート達の鍛錬、義足や車椅子などの発達などにより、パラリンピックの競技水準は向上している。4年後のロンドンが楽しみである。