大野病院事件、事故報告書見直しで賠償金支払いはどうなる?

 大野病院産科医逮捕事件で無罪が確定した。判決確定後の動きについて、無罪確定の産婦人科医に復職辞令より。

無罪確定の産婦人科医に復職辞令


 福島県立大野病院で2004年、帝王切開で出産した女性=当時(29)=が死亡した事故で、業務上過失致死罪などに問われ、無罪判決が確定した産婦人科医加藤克彦さん(40)に対し、県病院局は4日、復職を認める辞令を出した。勤務先などは本人の意向を確認して決めるとしている。


 06年3月に起訴された後、休職になっていた。無罪を言い渡した8月20日福島地裁判決に対し検察側が控訴を断念、4日午前零時で無罪が確定した。


 病院局は、加藤さんを減給とした処分や、県の調査委員会が医療ミスを認めた05年の報告書についての見直しも検討。遺族から賠償の要望があれば交渉に応じるとしている。〔共同〕(13:01)


 もうひとつ、毎日新聞大野病院医療事故:医師の無罪確定 県、事故調報告書を見直しへ /福島より。

大野病院医療事故:医師の無罪確定 県、事故調報告書を見直しへ /福島


 大熊町の県立大野病院で04年、帝王切開手術中の女性(当時29歳)が死亡した医療事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた加藤克彦医師(40)に対する福島地裁の無罪判決について、福島地検は3日の控訴期限までに手続きせず、4日午前0時で無罪が確定。県は判決を精査し、加藤医師の過失を認めた05年の事故調査委員会の報告書を慎重に見直していく。


 加藤医師は06年4月から休職扱いとなったが、県病院局によると、無罪確定で4日から復職扱いとなる。県は事件後、常勤医が1人しかいない「1人医長」を避けるため、産婦人科医を特定の病院に集約しており、大野病院では産婦人科を再開しない予定。同局は復職先について「加藤医師の意向を聴いた上で対応を決める」としている。今後、加藤医師本人や当時の手術スタッフ、専門家らからヒアリングし、05年の報告書の見直しを進めていく。


 検察側が8月29日に控訴断念の方針を明らかにした際、加藤医師は「心中ほっとしております。(逮捕からの)2年6カ月はとても長かったです。これからも地域医療に精いっぱい取り組んでまいります。改めて患者さんのご冥福をお祈り申し上げます」とのコメントを発表。医療現場に復帰する意向を示していた。【松本惇】


毎日新聞 2008年9月4日 地方版


 新聞報道をまとめると、次のとおりとなる。

  1. 福島県は、9月4日、加藤医師に対し復職の辞令を出す。
  2. ただし、「1人科長」を避けるため、大野病院では産婦人科を再開しない。
  3. 懲戒処分の元になった、事故報告書を慎重に見直す。
  4. 遺族から賠償の要望があれば交渉に応じる。


 上記中、問題となるのは、3、4の扱いである。「県立大野病院事故調査委員会報告書は、賠償金支払いのために主治医の過失ともとられる表現を訂正せずに残した。」という趣旨の発言を院長と県の病院局長がした*1。事故報告書を見直した場合、凍結されていた賠償金支払いを保険会社が拒否する可能性がある。この場合、福島県は新たに予算を組んで賠償金支払いに応じるのだろうか。それとも、医療過誤ではなく病気による死亡とのことで、補償をしないという方針になるのだろうか。
 事故発生時に、責任ある立場の人間が真摯にご家族にご説明していれば、示談や和解は今よりは容易だっただろう。事故報告書を見直すという失態も避けられた。しかし、刑事事件となったことで、医療側と遺族側の感情のもつれは深くなっている。自らの対応のまずさのため、福島県医療局は難しい判断をせざるをえなくなっている。