高齢化の進行にも関わらず、国民医療費が微減

 厚生労働省より、平成18年度国民医療費の概況が発表された。多くのマスコミは国民医療費減に比重を置き、報道を行ったが、日経等一部の新聞は異なる見出しを掲げた。前者の代表として、朝日新聞国民医療費が微減 06年度、診療報酬マイナスが影響を紹介し、日経新聞国民医療費、なお高止まり 06年度と読み比べてみる。


# 朝日新聞

国民医療費が微減 06年度、診療報酬マイナスが影響
2008年8月28日19時57分


 06年度の国民医療費は、前年度よりも13億円少ない33兆1276億円だったことが28日、厚生労働省のまとめでわかった。06年度の診療報酬改定が過去最大幅のマイナス3.16%だったことが影響した。


 65歳以上の医療費が17兆1233億円で、全体の51.7%を占めた。65歳未満の1人当たり平均医療費が15万8200円だったのに対し、65歳以上は64万3600円だった。国民全体の1人当たり平均は25万9300円で、前年度と同額だった。


 国民医療費が前年度よりも減ったのは、06年度と同様に治療行為の公定価格である診療報酬がマイナス改定となった02年度以来。改定は2年に1度実施されるが、改定のない年は2〜3%の伸びとなることが多い。


# 日本経済新聞

国民医療費、なお高止まり 06年度


 厚生労働省は28日、2006年度に医療機関に支払われた医療費の総額(国民医療費)が前の年度に比べ13億円減り、33兆1276億円になったと発表した。4年ぶりに減少したものの、依然として過去最高水準で高止まりしている。06年度は診療報酬引き下げや医療制度改革で医療費抑制を目指したが、急速な高齢化による医療費の膨張圧力は強く、抑制効果は限られた格好だ。


 国民医療費は病気やけがの治療のために医療機関に支払われた1年間の医療費の総額。診療費や調剤費などを含むが、健康診断や分娩(ぶんべん)などの費用は除く。


 国民1人あたりの医療費は25万9300円で、前の年度と同じで過去最高。年齢層別では、65歳未満の平均が15万8200円だったのに対し、65歳以上は64万3600円で約4倍。国民医療費に占める65歳以上の比率は51.7%と前の年度を0.7ポイント上回り、過去最高になった。(07:00)


 国民1人あたりの医療費をみると、65歳以上は65歳未満の約4倍となっている。だが、この数値は医療費をそれぞれの総人口で割った値であることを見逃してはならない。実際に病気になって治療を受けた人1人あたりに換算すると、若年者も高齢者もほぼ差がなくなる。この数値は、高齢になると病気にかかりやすくなり、医療費が増えるということを意味しているに過ぎない。


 人口の高齢化は医療費増加に影響を与えている。その意味で、通常増加するはずの国民医療費が2006年度はマイナスに転じたということは大問題である。この10年間でいうと、2000年度が−1.8%、2002年度がマイナス0.5%、そして2006年度が−0.0%である。2000年度のマイナスは、介護保険導入に伴い、老人医療費が介護保険に移行したことが原因である。2002年度と2006年度の医療費減は、診療報酬のマイナス改定によるものである。通常なら、6000億円〜1兆円増加すべきところがほぼプラスマイナスゼロとなった。すなわち、この分が医療費から削られたということを示している。国民所得に対する割合は、2001年度8.61%と比較し、2006年度は8.88%と横ばいである。


 朝日新聞等多くのマスコミは、国民医療費の減少について客観的に報道している。一方、日経新聞は医療費削減がまだ足りないという視点で記載をしている。医療費削減が医療崩壊を引き起こしている現状に目を背け、「医療費亡国論」にしがみついているとしか言いようがない。