エスカレーター事故、安全域が狭い設計だった?

 オーチス社、エスカレーター事故の続報。毎日新聞東京・有明のエスカレーター逆走:ブレーキ能力超過か 逆走防止、限界は9.3トンより。

東京・有明エスカレーター逆走:ブレーキ能力超過か 逆走防止、限界は9.3トン


 東京ビッグサイト(東京都江東区有明)の上りエスカレーターが急停止後に逆走し、10人が軽傷を負った事故で、エスカレーターに乗っていた人の総重量が、荷重制限の約7・5トンだけでなく、逆走防止用のブレーキ能力の限界である約9・3トンも超えていた疑いの強いことが分かった。このため、自動停止後にずり落ちるように逆走したとみられる。警視庁東京湾岸署は、安全管理に問題がなかったかなどについて捜査を進めている。


 製造元の「日本オーチス・エレベータ」(中央区)によると、事故時は荷重オーバーに伴い、電源が切れて自動停止したのと同時に、下り方向に逆走するのを防ぐため、ディスクブレーキが作動したとみられる。しかし、ブレーキ能力の限界は1ステップ当たり120キロで、総重量では約9・3トン。事故当時は1ステップに3〜4人が乗っており、重みを支えきれずに逆走した疑いが強いという。


 また、エスカレーターの逆走後、緊急停止ボタンを押したイベントスタッフが同署の調べに「ボタンを押したら(ブレーキがかかり)逆走が止まった」と説明していることも分かった。【川上晃弘、佐々木洋、古関俊樹】


 ◇自治体と業界に安全管理徹底を−−国交省が通知


 今回の事故を受け、国土交通省は4日、都道府県と業界団体「日本エレベータ協会」に対し、集客施設に設置されたエスカレーターについて(1)運営実態を把握し、設計上の積載荷重以上にならない(2)特にイベントなどで第三者に使用させる場合、適正な管理を確保させる−−ことなどを求める通知を出した。また、駅のエスカレーターについても、設計を超えた荷重にならないよう、各地方運輸局鉄道事業者を指導するよう求めた。【高橋昌紀】


毎日新聞 2008年8月5日 東京朝刊


 荷重制限が約7.5トン、ブレーキ能力限界は約9.3トン。両者の比をとると1.24となる。安全域は荷重制限の24%しかない。
 当面の安全対策としては、イベント時に人員を配置し、過積載とならないようにすることだろう。フェイルセーフの視点からは、荷重制限とブレーキ能力限界との比をできる限り大きくとるように設計変更をすべきである。さらに、エレベーターと同じように、一定の荷重がかかった時にブザーがなり、新たに乗り込む人に注意を促す仕組みも考慮して欲しい。
 誤った使い方をしても事故につながらないような仕組み作り、このことを業界団体「日本エレベータ協会」に望む。