ワークライフバランスへの疑念

 引き続き、閣議後記者会見概要(H20.07.11(金)10:55〜11:15 省内会見場)より。

閣議等について》
(大臣)


(中略)


 それから次の話題は「ワークライフバランス 仕事と生活の調和推進プロジェクト」についてですが、本年4月から我が国を代表する企業10社の参画を得まして、「仕事と生活の調和推進プロジェクト」を実施しているところです。具体的には鹿島建設株式会社、キヤノン株式会社、住友商事株式会社、全日本空輸株式会社、株式会社大和証券グループ本社、株式会社高島屋、株式会社電通日産自動車株式会社、株式会社日立製作所三井化学株式会社ですが、今般、本プロジェクトの取組の一段として、これら企業の経営トップから仕事と生活の調和実現に向けた決意表明、さらに、今年度に取り組む重点実施事項等を内容とするトップ宣言が取りまとめられましたので投込みをいたします。また、このワークライフバランスの取組を進めるにあたりまして、管理職や従業員の意識改革が必要でありますので、専門家のアドバイスを受けることが有効です。こうした取組を推進するために、相談助言を行う専門家の養成を支援したいと思っております。具体的には、専門家養成のカリキュラムなどについて5年間で、専門家5,000人の養成を目指すこととしております。こういう取組を通じて、ワークライフバランスの実現に向けて努めて参りたいと思います。


 厚生労働省 ワークライフバランスをみると、次のような記載がある。

いい仕事しよう。
いい人生しよう。


「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」始まります。


今、日本では、仕事と生活の両立で悩みを抱える人が多く、社会全体が”アンバランス”な状態です。厚生労働省ではこの状況を改善するべく、”仕事と生活の調和”を推進するプロジェクトを始動。まずは10社の協力を得て、経営トップ自らが、今年の主な取組内容などを発表しました。日本の働き方、生き方を変える挑戦が、ここから始まります。仕事をすることが、その日その日の生きがいにつながる。仕事以外の時間も充実させることが、明日への活力になる。その調和が、家族とあなた自身の幸せにつながる。そんな”仕事と生活の調和”、一緒に考えてゆきませんか。


 我が国を代表する企業10社の中にキャノンが含まれている。キャノンのワーク・ライフ・バランスを見ると、労働者のことを考える理想的な企業に見えてくる。しかし、日本では、偽装請負名ばかり管理職ワーキングプアなどの言葉に代表される違法労働行為が蔓延化しており、キャノンは不当労働行為企業の代表選手である。違法行為の実態を知るたびに、こういう猫なで声にはウラがあるのではないかと勘ぐらざるをえない。


 「労働時間等見直しガイドライン」(労働時間等設定改善指針)には、労働時間の短縮、労使間の話し合いの機会の整備などとともに、次のような記載がある。

ロ 労働者の抱える多様な事情及び業務の態様に対応した労働時間等の設定


業務の閑散期においても繁忙期と同様の労働時間等の設定を行うことは、事業主にとっても、労働者にとっても得るものが少ない。このため、時季や日に応じて業務量に変動がある事業場については、変形労働時間制、フレックスタイム制を活用すること。特に、年間を通しての業務の繁閑が見通せる業務については、1年単位の変形労働時間制を活用して、労働時間の効率的な配分を行うこと。また、フレックスタイム制の活用に当たっては、労働者各人が抱える多様な事情を踏まえ、生活時間の確保にも十分な配慮をすること。


また、業務の進め方について労働者の創造性や主体性が必要な業務については、労働時間等の設定についても、労働者の裁量にゆだねることが業務の効率的な遂行につながり、労働者の生活時間の確保にも資する場合がある。このため、事業主は、そのような業務に携わる労働者については、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制の活用も検討すること。裁量労働制を活用する場合には、労働者が抱える多様な事情に配慮するとともに、自己の雇用する労働者の労働実態を適切に把握し、必要に応じて、年次有給休暇の取得奨励や労働者の健康に十分配慮した措置を講ずること。


さらに、いわゆる短時間正社員のような柔軟な働き方の活用を図ること。


 ホワイトカラーエグゼンプション法案は残業ゼロ法案と揶揄され、国会提出もできなかった。ワークライフバランスも、労働環境を改善するよりは、賃金を抑制する手段として使われるのではないかという危惧が拭いされない。ワークライフバランスという横文字を使うことにより、本質を覆い隠そうという意図を感じてしまう。
 違法労働行為を繰り返してきた日本の企業をワークライフバランスの宣伝に駆り出したことは、逆効果である。少なくとも、私のような性格の悪い人間は、どんなに良いことが記載されていたとしても、素直に信じる気持ちにはなれない。