厚生労働省改革の開始

 舛添要一厚生労働大臣厚生労働省改革に動き出した。閣議後記者会見概要(H20.07.11(金)10:55〜11:15 省内会見場)より引用する。

閣議等について》
(大臣)
 閣議については、総理からサミットの簡単な報告がございました。警備を含めた成果について、それからトロント大学の評価によると、全体B+で78点、総理のリーダーシップは85点でAというような評価について外務大臣の方から報告がありました。


 それで私の方からは、いくつか案件があります。まず、先般以来申し上げていました人事政策検討会議の設置についてです。これは、国民の目線や、現場を踏まえた政策推進を可能とするために技官を含めた人事異動、研修、人事交流などの人事政策の在り方について、検討を行うために、人事政策検討会議を設置することにいたしました。これの議長は私、厚生労働大臣で、議長代理を事務次官とします。その他の会議のメンバーは、厚生労働審議官、大臣官房長、大臣官房総括審議官、大臣官房技術総括審議官、大事官房審議官医薬食品担当、及び医政局長とするということで、今日設置をいたします。そして適宜、民間の有識者の意見を聴取するという形でこれを進めたいと思っております。


 次に二番目ですが、今年の3月11日に設置しました改革準備室を、改革推進室として本日付けで改称いたします。人員を拡充して、私の下に直属の機関である改革推進室を中心に厚生労働省改革を行うということです。


 それから三つ目に新しく設置するものは、社会保険庁職員の服務違反調査内容などの具体的調査方法について、服務違反調査委員会を作り、ここで検討するということです。まず、これまで社会保険庁が行った調査の検証、二番目に全職員調査の実施、三番目に全職員調査の結果や、社会保険庁法令違反通報窓口に寄せられた情報を基にした詳細な調査について、調査等を実施していくために本日付で調査委員会を設置をいたします。後ほどすべてについて、具体的に書きました資料は皆様のところにお届けいたしますが、調査委員会の委員長を新日本有限責任監査法人理事長水嶋利夫、委員に赤松幸夫元検事、それから秋山をね、この3名を委員とし、あと調査チームを6名で構成し、すべて弁護士ですが、そのうちの4名は元検事であります。このチームが今言った職務を遂行するということです。


 人事政策検討会議、改革推進室、服務違反調査委員会の3つを作り、厚労省改革を進めるという決意を示している。服務違反調査委員会のメンバーには驚かされる。調査チーム6人が全て弁護士で、うち4名は元検事である。これから、厚生労働省は更正労働省(職員が更正するために国民のために労働する省庁)に名称変更した方が良い。


 以下、記者との質疑応答より。

《質疑》
(記者)
一番最初の人事に関する委員会ですが、いつ頃からどのようの活動を始めるのかということと、改革推進室との関係では、改革推進室の下に設置されるということになるのでしょうか。


(大臣)
人事政策検討会議は、改革推進室とは並立して、つまり、直接関係ない形で行われます。人事のことですので基本的に内部できちんと固めて、必要に応じて有識者の参加を望むということです。それから「5つの安心プラン」の総理がおっしゃった中の、最後の厚生労働省全体の改革の委員会は、今目下人選中ですので、できれば来週早々にも立ち上げたいと思っております。ですからそういうものがどれが上下関係にあるということではなくて、いろいろな歯車を回して国民にとって最終的に一番いい結果を出したいと思います。


(記者)
今日総理のところで随分長くお話されたようですが。何をお話されたのでしょう。


(大臣)
基本的に今申し上げた「5つの安心プラン」の進捗状況について総理についてご報告を申し上げております。最初の4つについては、子育て支援をどうする、それから昨日も視察に行きましたが、医師不足含めての医療制度の改革をどうするか、こういうものは着々と並行して以前からもやっていることをまとめようと思っておりますが、先ほど申し上げました、厚生労働省改革のための民間の有識者を含めた会議を作るということについて、総理のご所見をいただいて人選の案について「私はこういう方を選びたいと思ってますがいかがですか」ということで総理にお預けして、総理自身が検討し必要があれば手を加えて総理の意見をいただいて、できれば来週早々には発足させたいという思いです。そういう議論を総理のところでやってきたということです。


(記者)
来週発足する委員会では、「5つの安心プラン」全体について検討してもらうということになるのでしょうか。


(大臣)
いろんな委員会があって整理がつきにくいのかもしれないのですけれども、厚生労働省全体を改革する為に、これは民間の方々がある意味で主導になって外からの目でやっていただく。人事の問題というのは、それは、厚生労働省の中のことを良く知っておかないといけないし、特に人事の中で私が申し上げたのは、技官の人事についてきちんともっと透明性を持たせるようなことを含めてやる。それから、ノンキャリとキャリアの関係をどうするか、これは目安箱みたいなものを設けて皆が私にメールをくれた中でいろいろそういう問題点が指摘されてきましたので、それを人事という観点から特化して考えたらどうなのか。例えば、「臨床経験のない技官が医療政策をやれるのですか」というのが現場のお医者さんから問題提起が出ている。そうすると、臨床に1〜2年行って交流したらどうですかというような話も含めて、要するに人事全体の検討会議です。そして、改革推進室というのは、私の直属であるわけですから、厚生労働省全体としていろんな施策があがっていきますけれども、国民の目線に立った時、これは問題があるのではないかというチェックする機関としておいているわけです。そして、今回は、総理の肝いりで作りますから、厚生労働行政全体を見直すような形であるので、こういうのは一つだけやるより、複数が並立しながら、競合しながらやっていくというのは、大変、私はむしろ良いことであって、最終的には、全てのトップが私になりますから、そういう意味では、私の下にあらゆる情報と様々な雑多な意見が入ってくる。それを私なりにまとめて総理にお持ちして、総理と私で最終的に政府の方針はこうだということを決めるという体制づくりをやりたいということです。


(中略)


(記者)
改革推進室の方では、当面具体的にどんなテーマに取り組まれるお考えでしょうか。


(大臣)
これは、とりあえず医療、介護を中心に考えています。というのは、年金について言うと、年金の作業委員会があったり、特別チームが動いたりしていて、これはこれなりの成果を上げております。それから、その他の、例えば、労働行政の分野について言うと、様々な審議会もあります。今当面は、医療、介護の分野を中心にやりたいと思っております。しかし、これから先どうしても労働政策について、そういう直属の改革室が取り扱った方が良いということがあればそれは適宜発令をしてこれを使うということであります。


 人事政策検討会議、改革推進室の役割分担に関し、概略が示されている。
 人事政策検討会議は、人事問題改革の組織である。舛添厚労相は、技官人事、特に医系技官人事に危機感を持っている。医療崩壊を招くような政策を医系技官がためらうことなく実施していることを憂慮している。一方、組織にとって人事権は最大の権力である。それを舛添厚労相は現場から取り上げ、トップダウンのような形で改革を実行しようとしている。抵抗勢力との暗闘が始まる。
 改革推進室は、厚労省改革の中味について議論する部署となる。それも、医療と介護分野について議論する場所となる。年金、労働の問題もあるが、医療と介護が優先順位が高いと判断していることを明言している。


 厚労省改革がどのような結末を迎えるか、先行きは見えない。しかし、既得権益に守られて誰もが手をつけようとしなかった厚労省にメスが入ろうとしていることは間違いなさそうである。