社会保障費削減で経済成長と雇用確保が可能なのか?

 FujiSankei Business、政府、諮問会議で経済成長戦略 年間2%以上の成長持続より。

政府、諮問会議で経済成長戦略 年間2%以上の成長持続


FujiSankei Business i. 2008/6/11



 ■年金運用の拡大「検討」に後退


 政府の経済財政諮問会議は10日に開いた会合で、経済財政改革の基本方針(骨太の方針2008)の柱となる経済成長戦略をまとめた。生活者視点を重視する福田首相の意向を反映する一方、羽田空港の国際化など省庁の反発をはねのけ、挑戦的な内容も並んだ。今後10年程度、物価変動を除く実質で年間2%以上の成長持続を掲げたものの、改革のスケジュールが以前よりも後退したケースも目立ち、戦略の実効性が問われる。


     ◇


 戦略の柱は、人材活用やグローバル化対応を進めることで少子高齢化など日本の弱点を克服。技術力という強みを生かし、環境分野などで世界に貢献することを目指している。


 より実現性を高めるため、施策の多くに数値目標や実施期限などを設けたことが大きな特徴だ。人材活用では、2010年度までに若者や女性、高齢者の雇用を220万人拡大することや20年をめどに留学生30万人を受け入れ、日本での就業を支援することなどが盛り込まれた。また、羽田空港の国際化についても、10年に国際発着枠倍増など踏み込んだ目標を設定している。福田首相は「この戦略を福田内閣の成長力強化の指針としたい」と語った。


 一方、内閣府が「郵政民営化以上の改革」として議論してきた150兆円規模の公的年金積立金の運用方法については、株式や外債の運用割合を増やす当初方針を「幅広い検討を行う」と一歩後退させ、関係省庁との調整の難しさを印象づけた。


 この日の会合では、骨太の方針の骨子案もまとまった。7月の北海道洞爺湖サミットを見据えた「低炭素社会の構築」や、道路特定財源一般財源化などを盛り込み、福田カラーを強く打ち出している。


     ◇


 ■経済成長戦略の骨子


 【目標】


 今後10年間程度、人口減少下でも実質2%以上の成長を実現する


 【3つの戦略】


 ◆全員参加経済戦略=2010年度までに若者・女性・高齢者220万人の雇用充実▽電子政府の実現


 ◆グローバル戦略=経済連携協定(EPA)の推進▽空の自由化(羽田空港の国際化など)▽対日投資の拡大▽世界から高度人材を受け入れ


 ◆革新的技術創造戦略=健康、医療産業の育成▽IT、ロボット技術の活用▽環境・エネルギー技術などのトップランナー構想


 経済財政諮問会議に関してもう一つ。東京新聞『社会保障も聖域ではない』 首相、2200億円圧縮堅持より。

【経済】

社会保障も聖域ではない』 首相、2200億円圧縮堅持
2008年6月11日 朝刊


 政府は十日、経済財政諮問会議(議長・福田康夫首相)を開き、今月末にとりまとめる「骨太の方針2008」の骨子案を了承した。福田首相は、歳出改革の最大の焦点となっている社会保障費について「社会保障も聖域ではない。『骨太の方針2006』にのっとって非効率を徹底して削減する」と述べ、毎年二千二百億円の圧縮目標を堅持する姿勢を明確にした。
 社会保障費の抑制に対しては、政府や与党内から医師不足などの現状から「削減は限界」との声が上がっていた。しかし、福田首相は、歳出・歳入一体改革の堅持をあらためて強調した。
 この点に関し、御手洗冨士夫日本経団連会長ら民間議員は「社会保障費の伸びを圧縮すべく、最大限の削減を行うべきだ」として、医療費を中心としたコスト抑制策を提示。
 薬効成分が同じで割安な「後発医薬品ジェネリック)」の使用促進で毎年七百億円(国庫ベース)、入院期間を半分に短縮したり、医療機関が連携し重複した検査や受診を省くことなどで同二百億−三百億円が削減できるとの試算を示した。
 加えて、雇用保険の国庫負担千六百億円(〇八年度)についても大胆に縮減すべきだと提言。これに対し、舛添要一厚生労働相は「労使の問題もあるし、説得できるか疑問」と反論、慎重な見解を示した。
 「骨太の方針2008」には道路特定財源一般財源化方針を明記するほか、環境問題が主要テーマとなる七月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)を前に「低炭素社会の構築」を優先課題に据えた。


たばこ増税より税の抜本改革を 財務相強調


 額賀福志郎財務相は十日夜、民放のニュース番組に出演し、たばこ税増税を目指す超党派の議連結成の動きについて「消費税や所得税法人税、資産税など税の本筋の議論をし、安定した財源をつくることが大事だ」と述べ、“小手先”の税制改革ではなく、消費税などの抜本改革が必要だと強調した。


 2010年度までに若者・女性・高齢者220万人の雇用というが、その受け皿はどこなのか、記事を読んでも全く分からない。社会保障費を抑制することは、医療・介護の停滞をもたらす。高齢社会を迎え、本来なら最大の成長産業となるべきサービス分野をつぶすと、雇用の受け皿自体がなくなる。社会保障費削減で経済成長と雇用確保が可能だと本気で考えているのだろうか、疑問に感じる。健康、医療産業の育成というが、少なくとも保険診療で運営している一般的な医療機関の経営健全化を目指しているようではなさそうである。混合診療解禁の匂いがプンプンする。
 そもそも、金儲けを目的とする大企業経営者を民間議員と表現することに抵抗を感じる。経団連の意見を政府の方針に反映させるということは、自らの利益を国益の上に置く行為である。税制改革=消費税増税という路線が見え隠れする。大企業経営者が率先して国の財政危機を乗り切るために法人税増税を提言すれば、喝采を浴びるはずだが、そのような動きは全くない。