1日9単位算定可能対象患者制限の強化

 リハビリテーション診療報酬に関して重大な変更があった、との連絡が入った。平成20年度診療報酬改定に係る通知等について中、「平成20年度診療報酬改定関連通知の一部訂正について New 6月2日」という項目がかなり下の方にある。 全体版(PDF:3,584KB)の2ページ目に求める情報がある。

事務連絡 平成20年5月30日


厚生労働省保険局医療課 


診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について(平成20年3月5日保医発第0305001号)


第7部リハビリテーション
<通則>
7  疾患別リハビリテーション料は、患者1人につき1日合計6単位(別に厚生労働大臣が定める患者については1日合計9単位)に限り算定できる。

 以下、追加された規定。
 

 当該別に厚生労働大臣が定める患者のうち「入院中の患者であって、その入院する病棟等において早期歩行、ADLの自立等を目的として心大血管疾患リハビリテーション料(I)、脳血管疾患等リハビリテーション料(I)、運動器リハビリテーション料(I)又は呼吸器リハビリテーション料(I)を算定するもの」とは、訓練室以外の病棟等(屋外を含む。)において、早期歩行自立及び実用的な日常生活における諸活動の自立を目的として、実用歩行訓練・日常生活活動訓練が行われた患者であること。ただし、平行棒内歩行、基本的動作訓練としての歩行訓練、座位保持訓練等のみを行っている患者については含まれない。


 1日9単位算定可能対象患者の削減)で指摘した内容を再掲する。なお、青字部分を追加した。


 今回の診療報酬改定で、1日9単位算定可能対象患者の削減が行われた。下記のような規定に変更された。別表第九の三とは、別に厚生労働大臣が定める1日9単位算定可能な患者のことである。

別表第九の三:第2章第7部通則第4号に規定する患者
 回復期リハビリテーション病棟入院料を算定する患者
 脳血管疾患等の患者のうちで発症後六十日以内のもの

第2章第7部通則第4号の規定


4 心大血管疾患リハビリテーション料、脳血管疾患等リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料及び呼吸器リハビリテーション料(以下この部において「疾患別リハビリテーション料」という。)に掲げるリハビリテーション(以下この部において「疾患別リハビリテーション」という。)の実施に当たっては、医師は定期的な機能検査等をもとに、その効果判定を行い、別紙様式21から別紙様式21の3までを参考にしたリハビリテーション実施計画を作成する必要がある。また、リハビリテーションの開始時及びその後(疾患別リハビリテーション料の各規定の注3にそれぞれ規定する場合を含む。)3か月に1回以上(特段の定めのある場合を除く。)患者に対して当該リハビリテーション実施計画の内容を説明し、診療録にその要点を記載すること。
 また、疾患別リハビリテーションを実施している患者であって、急性期又は回復期におけるリハビリテーション料を算定する日数として、疾患別リハビリテーション料の各規定の注1本文に規定する日数(以下「標準的算定日数」という。)を超えて継続して疾患別リハビリテーションを行う患者(疾患別リハビリテーション料の各規定の注3にそれぞれ規定する場合を除く。)のうち、治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合(特掲診療料の施設基準等別表第九の八第一号に掲げる患者であって、別表第九の九第一号に掲げる場合)は、継続することとなった日を診療録に記載することと併せ、継続することとなった日及びその後1か月に1回以上リハビリテーション実施計画書を作成し、患者又は家族に説明の上交付するとともにその写しを診療録に添付すること。なお、当該リハビリテーション実施計画書は、(1)これまでのリハビリテーションの実施状況(期間及び内容)、(2)前月の状態との比較をした当月の患者の状態、(3)将来的な状態の到達目標を示した今後のリハビリテーション計画と改善に要する見込み期間、?機能的自立度評価法(Functional Independence Measure、以下この部において「FIM」という。)、基本的日常生活活動度(Barthel Index、以下この部において「BI」という。)、関節の可動域、歩行速度及び運動耐用能などの指標を用いた具体的な改善の状態等を示した継続の理由、などを記載したものであること。


4の2 疾患別リハビリテーションを実施している患者であって、標準的算定日数を超えて継続して疾患別リハビリテーションを行う患者(疾患別リハビリテーション料の各規定の注3にそれぞれ規定する場合を除く。)のうち、患者の疾患、状態等を総合的に勘案し、治療上有効であると医学的に判断される場合(特掲診療料の施設基準等別表第九の八第二号に掲げる患者であって、別表第九の九第二号に掲げる場合)は、継続することとなった日を診療録に記載することと併せ、継続することとなった日及びその後3か月に1回以上、リハビリテーション実施計画書を作成し、患者又は家族に説明の上交付するとともにその写しを診療録に添付すること。なお、当該リハビリテーション実施計画書は、(1)これまでのリハビリテーションの実施状況(期間及び内容)、(2)前月の状態とを比較した当月の患者の状態、(3)今後のリハビリテーション計画等について記載したものであること。

 「第2章第7部の通則5に掲げるADL加算を算定する患者」が削除されている。


 ADL加算廃止は、診療報酬上大きなマイナス要因となっている。加えて、1日9単位算定可能患者の削減という悪影響を及ぼしている。
 これまでは、各疾患別リハビリテーション料Iを算定している場合にADL加算を算定できた。したがって、発症から60日以上経ち、回復期リハビリテーション病棟入院料を算定していなくても、1日9単位行う場合があった。
 若年の重症脳血管障害者等で回復期リハビリテーション病棟算定日数上限を超えて入院している方でも、十分なリハビリテーション提供が可能だった。しかし、4月からは、1日6単位以下に抑えなければならないことになる。
 種々の理由で、回復期リハビリテーション病棟に入れなかった患者も発症後60日を超えると、1日6単位以下となる。重度脊髄損傷や頭部外傷で、障害者施設等病棟に入ってリハビリテーションを行っている患者はまともに影響を受ける。


 医学的理由で密度の濃いリハビリテーションを行う必要がある患者でも、困難となってしまった。これから、一人一人個別に対策を考えなければならない。


(以上、再掲内容+追加内容)


 今回の追加規定は、1日9単位算定可能対象患者制限の強化を目的としている。すなわち、「訓練室以外の病棟等(屋外を含む。)において、早期歩行自立及び実用的な日常生活における諸活動の自立を目的として、実用歩行訓練・日常生活活動訓練が行われた患者」以外では、1日9単位算定は認めないという意思表示である。発症後60日以内の急性期患者でも、重症度が高く、実用的なADL訓練ができない場合には、6単位の範囲で行いなさいという厚労省の意思表示である。


 どうやら、厚労省は、急性期リハビリテーションで必要のない患者まで1日9単位近く、無駄なリハビリテーションが行われていると信じているらしい。ますます、重度患者が集中的なリハビリテーションを受ける機会が失われていく。


(以下、6月7日、コメントを受けて、追加した内容)


 情報が錯綜している。新しい規定は、「以前のADL加算に相当するもの」も9単位OKになったという解釈も成り立つ。
 一方、別表第九の三:第2章第7部通則第4号に規定する患者の部分を詳しく規定し直したと考えることもできる。
 しばらくは、厚労省がどのような情報を出してくるか、注意して見守る必要がある。


(以下、6月8日、PT-OT.NET、医療保険:一部訂正で9単位対象の拡大へ を受け、修正)

医療保険:一部訂正で9単位対象の拡大へ
http://www.mhlw.go.jp/topics/2008/03/dl/tp0305-1dl.pdf
5月30日の通知では、文面に解釈に苦労し混乱を招いていましたが、厚生労働省より下記のような解釈であると説明がありました。 (電話にて説明)


厚生労働省の解釈説明について
今回(平成20年度)の訂正で ADL加算が廃止されたことにより9単位算定出来る患者の項目 ADL 加算を算定する患者が抜け落ちてしまった。
厚生労働省の意向としてはこの自体を重く受け止め抜け落ちてしまった項目を今回の一部訂正で修正するも。


近日、官報で通知が出る予定。


厚生労働大臣の定める患者:1日合計9単位算定可能な患者は下記の通りに変更されると予測されます。


厚生労働大臣が定める患者
・ 回復期リハ病棟入院料を算定する患者
・ 急性発症した脳血管疾患等の患者であって発症60 日以内の患者
・入院中の患者であって、その入院する病棟等において早期歩行、
 ADLの自立等を目的として疾患別リハビリテーション(?)を算定するもの(追加)


 厚労省は、リハビリテーション医療を制限するものばかりと考えていた。とりあえず、一安心である。