脳卒中データバンク 中等度以上の障害でも20%以上はリハ未施行

 脳卒中急性期リハビリテーションの現状について、脳卒中データバンク2005より*1

【対象】
 脳梗塞急性期8,003例

  • 男 5,019
  • 女 2,984
  • 年齢 70.11±0.13歳(平均±SD)


【方法】

  • 重症度: JSSにより、軽症4点以下、中等度5〜15点、重症16点以上とした。
  • 予後(短期的): 退院時のmodified Rankin Scale(mRS)が0〜3を良好、4〜6を不良とした。
  • 退院時の障害改善: JSSの入院時と退院時の差が-5以上のものを改善群とし、その他のものは改善なしとした。
  • 在院日数: 短期在院群14日以内と長期在院群14日以降で分類した。
  • リハビリテーション開始時期: リハビリテーション未施行者群、3日以内開始群、28日以内開始群および29日以降に開始した群の4群に分類した。

 以上の分類を基にして、重症度、予後および入院期間に関して病型別も含めた検討を行った。


【結果】
# リハビリテーション訓練開始時期と重症度
 全症例(文献のデータを%に換算)

未施行 3日以内 28日以内 29日以降
JSS 4点以下(軽症)5,759例  41.1%  33.2%  25.4%  2.4%
JSS 5-15点(中等度)1,440例  21.3%  41.9%  36.4%  0.4%
JSS 16点以上(重症)768例  28.3%  34.5%  36.2%  1.0%


 入院時重症ほど開始時期は遅れ、軽症ほどリハビリテーション訓練未施行者が多かった。病型分類でみると、TIAに未施行者が多かったが、それ以外の病型でも重度症例の19.5〜30.4%に、リハビリテーションがされないまま退院する症例が認められた。


# リハビリテーション訓練開始時期の効果
 短期予後、障害改善には、リハビリテーション開始時期は関与を認めなかった。
 入院期間を短くする因子として、リハビリテーション開始時期、入院時重症度、症状進行および再発が関係していた。
 入院期間の関与因子を病型別に検討すると、TIAとアテローム血栓性塞栓以外の病型では、リハビリテーション開始時期が最も強く関係していた。


 脳卒中データバンクに参加している急性期病院のデータでは、中等度以上の障害があっても20%以上はリハビリテーション未施行だった。一方、3日以内にリハビリテーションを開始している患者も中等度で41.9%、重度で34.5%いる。急性期病院でのリハビリテーション施行状況に二極分化が生じている。
 「短期予後、障害改善には、リハビリテーション開始時期は関与を認めなかった。」ということは、評価尺度の問題である。少なくとも、mRSを0〜3までと4〜6に二分化しただけの粗い指標では、リハビリテーション効果は分からない。
 入院期間短縮に、リハビリテーション開始時期が最も強く関与しているという結果は興味深い。急性期病院の在院期間短縮が至上命題となっている今日、脳卒中急性期病院でリハビリテーション部門を強化する動機となる。

*1:安部博史: リハビリテーション開始時期にみた重症度と予後.脳卒中データバンク2005、中山書店、2005、p.104-105.