「たばこ1000円」論争

 朝日新聞「たばこ1000円」論争に火 「税収増」「主張安易」より。

「たばこ1000円」論争に火 「税収増」「主張安易」
2008年05月31日09時59分


 「たばこ1箱を千円に」。日本財団会長の笹川陽平さんの「たばこ値上げ運動」が波紋を広げている。税収は増え医療費は減らせるという提言だが、「国を救う名案だ」「いや喫煙者への差別だ」と賛否の論争に火がついた。31日は世界禁煙デー


 発端は、笹川さんが3月からインターネットのブログなどで訴え始めたアイデアだ。*1


 1箱約300円という日本のたばこの値段は安すぎる。1箱千円にすれば9兆5千億円の税収増が見込め、仮に消費量が3分の1になっても3兆円超の税収増が見込める。社会保障の財源として、消費税より先に議論すべきだ。千円になれば多くの人が喫煙をやめるので、健康被害が減って国民医療費を抑えられる。未成年の喫煙抑制や防火にも役立つ、と説く。


 提言はメディアで報じられ、ネットでも話題に。「身近な問題として大いに議論を。私は国会議員に働きかけて立法をめざす」と話す。


 タクシーの禁煙化や路上禁煙条例の制定など、たばこをめぐる環境は厳しくなっているが、こうした動きを「禁煙ファシズム」として批判する声もある。


 ジャーナリストの斎藤貴男さんもその一人。「私はたばこが嫌い」としつつ、「健康を害して高い医療費がかかるから高い税金を払えというのは、後期高齢者医療制度と同じ論法。世の中はお互い様なのに人の生き方や好みを監視し排除するのはおかしい」。


 「タバコは神様の贈り物」の著書がある医師、橋内章さんも「禁煙推進で医療費が抑制できると言うが、果たしてそうか。仮にたばこが有害ならば、やめると寿命は延び、高齢者医療費も増える。安易な主張だ」と批判する。


 製薬会社ファイザーが4月、喫煙者9400人へのアンケートで「価格がどれぐらいになれば禁煙するか」と尋ねたところ、「500円」で54%、「千円」で79%の人が禁煙すると答えたという。


 値段について、日本禁煙学会の作田学理事長は「国際的に合わせるなら、千円ぐらいがいい。未成年も買いにくくなる」と笹川案に賛成だ。神経内科医としてたばこの害を実感する。「40〜50代のくも膜下出血の多くは喫煙者。がんだけでなく他の病死のリスクも高く、周りで煙を吸わされる人も含めて健康被害は明らか。税金でなく罰金を科したいぐらい」という。


 こうした論争に、売る側のJTは「喫煙は特定の疾患のリスクを高めるが、吸うか吸わないかは個々人が判断すべきだ」と主張。喫煙者率と肺がん死亡率の相関関係も認めておらず、笹川案にも「特定の商品に過大な負担を強いる増税には断固反対。業界一丸となって反対運動に取り組む」(広報部)と構える。


 さて、政府はどうするのか。税制を考える首相の諮問機関である政府税制調査会香西泰会長に取材を申し込むと、その答えは「税制の論議はこれから。現時点では答えられない」だった。(本山秀樹、上野創)


 不覚ながら、笹川陽平氏の主張は、朝日新聞を読んで初めて知った。「たばこ1000円」論に賛成する。税収が増え、健康被害が減ることになるのならば、一挙両得である。


 値上げ反対論も紹介されている。「仮にたばこが有害ならば、やめると寿命は延び、高齢者医療費も増える。安易な主張だ」という部分には苦笑を禁じ得ない。医療費抑制第一でそのために国民の健康が悪化してもかまわないという主張は、厚労省と瓜二つである。この論を推し進めると、長生きは医療費増につながるので、タバコを吸って早死にしましょう、ということになる。

(以下、補強部分)*2
 医療費抑制第一主義からの転換を目指すべきである。喫煙率が低下により、健康被害が未然に防がれ、その結果高齢者が増えることは国にとって本来望ましいことである。長寿を喜べない社会はいびつである。医療費等社会保障費増額が必要なら、ぞの財源調達法を考えるべきである。安易な消費税論議に与せず、たばこ税論議に火をつけた笹川陽平氏の主張に共感する。