後期高齢者診療料届け出医療機関は全体の9%弱か?の続報を提示する。読売新聞、「高齢者主治医」制度の届け出状況で…青森県ゼロより。
「高齢者主治医」制度の届け出状況で…青森県ゼロ
届け出14府県で10%未満
厚生労働・総務両省で作る「『長寿医療制度』実施本部」は14日、75歳以上の後期高齢者医療制度(長寿医療制度)で新たな医療サービスの目玉とされた高齢者担当医(主治医)制度の届け出状況を明らかにした。
届け出数(4月14日時点)は、内科を主とする診療所3万7356施設のうち8876施設で23・7%だった。届け出数は都道府県間で大きなばらつきがあり、各地の医師団体などが同制度に反対していることなどが影響しているとみられる。
届け出割合が最も低かったのは、青森県のゼロ。秋田県0・7%、山形県3・3%など10%未満だった地域が14府県あった。一方、多かったのは、鹿児島県の86・3%で、愛媛県73%、長野県54・8%などだった。
(2008年5月14日 読売新聞)
各社から、全く同じような内容の記事が配信されている。「『長寿医療制度』実施本部」からの大本営発表である。
注目すべき内容は、2つある。まず、後期高齢者診療料届け出率の分母となる数字を、内科を主とする診療所3万7356施設(産経新聞の既報では平成17年10月現在の数値)としていることである。この数値について、検証が必要である。もう1点は、届け出数に地域差が大きいことである。
# 内科を主とする診療所3万7356施設の根拠
Googleで、「内科を主とする診療所」で検索をかけたところ、「厚生労働省:医療費の動向」がひっかかった。平成18年度医療費の動向、医療機関種類別の概算医療費の、「表7-1 主たる診療科別 医科診療所 医療費の推移」に診療所数が記載されている。平成18年度の構成比を示す。
医科診療所 | 内科 | 小児科 | 外科 | 整形外科 | 皮膚科 | 産婦人科 | 眼科 | 耳鼻咽喉科 | その他 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
診療所数 | 77,742 | 38,018 | 3,430 | 5,151 | 7,278 | 2,856 | 2,496 | 6,085 | 3,740 | 8,689 |
構成割合 | 100% | 48.9% | 4.4% | 6.6% | 9.4% | 3.7% | 3.2% | 7.8% | 4.8% | 11.2% |
「厚生労働省:医療費の動向」が内科を主とする診療所の根拠と推測する。ちなみに平成17年度では、内科を主とする診療所は37,861施設となっている。
「厚生労働省:平成17年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」、統計表8 診療科目別にみた一般診療所数・歯科診療所数の年次推移(重複計上)では、平成17年10月1日現在で、一般診療所数は97,442ヶ所、うち内科を標榜しているのは63,286ヶ所と記載されている。一般診療所数は、「厚生労働省:医療費の動向」では、平成18年度で77,742施設となっており、2万施設も少ない。おそらく、「厚生労働省:医療費の動向」では主たる診療科を1つに絞り込めなかった診療所を母数から取り除いているのではないだろうか。詳細は不明である。
「『長寿医療制度』実施本部」は、後期高齢者診療料の届け出割合をできる限り高くみせるために都合の良い数字を探し出した。例えば、「外科、内科」と標榜している診療所でも、後期高齢者診療料を算定しても構わないだろうが、主たる診療科は外科となるため、「『長寿医療制度』実施本部」発表の母数からは除外される。
「医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」を用いると、全く違った様相を見せる。内科を標榜している診療所を母数とすると、8,876/63,286=14.0%、一般診療所総数97,442ヶ所を分母とすると9.1%となる。新聞報道された23.7%は水増しされた数字である。
# 届け出数の地域差
十和田の診療所が県内初、主治医制度申請/後期医療制度でも記載したが、青森県はその後1ヶ所の診療所が届け出たことがニュースとなった。秋田県は2ヶ所である。いずれも、地域医師会が根強い反対運動を繰り広げている。後期高齢者診療料届け出割合の地域差は、後期高齢者医療制度の危険性が周知されているかどうかの差と考える。