中医協「回復期リハビリテーション病棟に対する成果主義導入」論議

 昨日に引き続き、中医協診療報酬基本問題小委員会(2007年11月30日)にて行われたリハビリテーションに関する集中討議を紹介する。本日は、回復期リハビリテーション病棟に対する成果主義導入をとりあげる。
 中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会平成19年11月30日議事録と、そこで用いられたリハビリテーションについて 資料(診-2-3)を使用し、厚労省のプレゼンテーションを再現する。

○土田小委員長
 ありがとうございました。
 次の議題として「リハビリテーション」を予定しておりますので、それもあわせて御審議いただきたいと思います。
 それで、先に事務局より説明のほうをお願いいたします。


○事務局(原医療課長)
 医療課長でございます。中医協の診−2−1の資料、診−2−2、診−2−3の資料をあわせて説明をさせていただきたいと思います。


(中略)


 そこで、回復期リハビリテーション病棟につきまして、本来の目的であります回復をしっかりとしていただくという意味で、その部分の評価をしっかりと検討したいと思っておりまして、参考資料、中医協診−2−3をごらんいただきたいと思います。回復期リハビリテーション病棟の目的は、よくなって、障害が若干残るかもわかりませんが、在宅へ復帰できる、日常生活に戻れるということが大きな目標でございますので、そこで、回復期リハビリテーション病棟において、その回復がどれぐらいあったかというものを指標化して評価をしていきたい。




 そのための指標として、ここでは、日常生活機能指標ということで、1ページ目にお示しをしております。実はここは、床上安静の指示が必要かどうか、手が胸のあたりまで持ち上がるか、寝返りができるか、このような指標で、これらを総合すると日常生活の度合いがわかるのではないかということでございます。
 この指標は実は、今日は一番後で出てまいりますけれども、看護の重症度、看護必要度というところで使っている、いわゆるADL評価の指標でございまして、これは裏返せば、患者さんがこういう状態だとケアをするほうの手間が増えるといいますか、手間がかかるというような指標です。逆に言いますと、患者さんの自立度というふうにも見ることができるので、これを一つの指標として見ていってはどうかということでございます。回復期リハビリテーション病棟のリハビリのいろいろな指標として、専門的な指標がございますけれども、全体として回復度合いを見るのにはこの指標が最もいいのではないかということで、この指標を中心に分析をしてみました。



 2ページ目をごらんいただきたいと思います。先ほどのいろいろな、逆に言うと、問題があるという部分がプラス何点ですので、最高20点ということになります。これで見ますと、この回復期リハビリテーション病棟、サンプリングして調査したわけですが、そこで入院時にどれぐらいの機能を持っていたかということでいきますと、実は0点とか1点というところはかなり多くて、右へ下がっていくということになります。実はこの0点、1点というのは、先ほどの指標で見ると0点、1点なのですけれども、もともと、例えば運動器の手術をした後来られる患者さんとかいうことでいきますと、ほかのところは大丈夫だということになりまして、必ずしもそういう意味での指標としてはぴったりとこないところもあるわけですけれども、そういう意味ではさまざまな指標を組み合わせることも必要なのですが、家へ帰れるかどうかという指標でいくと、これが一番いいのではないかということで、これを見ております。
 ここでは仮に10点以上でとりますと、これは10点といいますと、かなりいろいろとお世話が必要になる。逆に言うと、自立的には非常に低いという状態かと思いますが、かなり重い方というふうに思われます。こういう方が2割程度おられました。



 この方々がどれぐらい入院中に生活機能の指標が改善するかということで、3ページ目でございますが、ここで見ますと、32人のところが0点でございまして、それより右が回復した、改善をしていった。それから左側が、逆に言うと少し悪化したということになります。これで見ていきますと、おおむねかなり改善する方向にシフトしておりますので、全体として、先ほどの指標で見る限り、非常にいい改善をしているのではないか。ただ、疾患が悪化したりということもありますので、どうしても左へ来る方も中には若干おられるということでございました。



 それから4ページ目でございますが、例えば、ここでは先ほどの一応10点という目安をつけまして、10点以上、非常に重い患者さんがどうなるかということを見ますと、改善の度合いがどちらかというと右のほうが多いのですが、左へ行く人もいるということで、このあたりの方をどれだけ改善させるかというのは、まさしくリハビリテーションの力量であると専門家の方々からも聞いております。全体として、それでも比較的右の方にずれていっているということでございました。


 それから5ページですけれども、調査で実際に退院後どこへ行きましたかということで聞いております。そうしますと、自宅ないしは有料老人ホームへの復帰をした方が4分の3おられました。あと老健施設へ9名、病院に転院された方が38名、こういう結果でございました。
 以上、これらのことから、本体のほうの4ページに戻っていただきたいのですが、この回復期リハビリテーション病棟の機能回復の度合いといいますか、それの指標をつくっていきたいということで、先ほど申しましたように、最終的な目標は、結局自宅あるいは居住系施設を入れていいと思いますが、居宅等へ帰れるということが非常に重要である。また、ここでお示ししておりませんが、退院のときの状況は、多くが0点、1点ということで、ほとんど回復されてから帰られる方が非常に多かったということでございますので、居宅等へ帰られるという患者さんの割合が高いということを一つ評価してはどうか。
 それから、自宅等へ帰れるとだけでいきますと、やはり軽症の方ばかり受け入れられても困りますので、一定以上の重症の方もしっかりと受け入れていただきたい。その受け入れた重症の患者さんについて、退院までにその日常生活機能を一定程度改善していただく、こういうようなところに回復期の重要な役割があるということで、これもどの程度回復するか、あるいは一定程度改善された方がどれぐらいいるか、そのようなものを指標としてはどうか。
 あともう少し、データも先ほど少し少なかった点もございますので、この指標を用いて試行的に質の評価というものを導入して、今後さらに検討を深めていってはどうかと考えております。
 また、先ほど前の説明で言いましたが、回復期リハビリテーション病棟での医師の専従要件については、医師というよりは、どちらかというと、PTやOTという方々の評価を重視する観点もありまして、医師の専従要件についてはこの際見直してはどうかと思っております。


(中略)


 説明、長くなりましたが、以上でございます。


○土田小委員長
 どうもありがとうございました。
 ただいまの「介護保険における維持期リハビリテーション」と、それから医療保険における「リハビリテーション」の2つの説明をしていただきました。
 それに関しまして質問、どうぞ。


 質疑応答より。

○竹嶋委員
 ひとつ今の説明を聞きながら、これは老健の鈴木課長にお願いしたいのですが、医療課のほうで、この日常生活機能評価をされましたね、指標、これは大変いいと思います。老健で、この評価の点数、私は相当高いところがある、要するに、自立度が高い人はかなりおると思います。その方たちに維持期リハビリをするのに、PTはいない、OTは少ない、看護師さんもいない。今の老健ですよ。だから、そういう中で、「はい、医療はここで終わった。上限日数が終わった」「はい、これから維持期へいらっしゃい」、受けるほうもそういうものがないし、大体行くほうも行かれない。こういうところをもっと検討してほしい。


(中略)


○鈴木委員
 回復期リハでございますけれども、私は、今竹嶋委員も評価自体は問題なかろうということですけれども、その本当にパラメーターとしてこういうものではかれるものなのかというのは、多少不安そうに「試行的」だというふうにも表現されておりますので、弾力的に2年間待たなければ変わらないというようなことではなくて、本当に、現場の矛盾が出ていたときに、弾力的な対応をぜひお願いをしたいと思います。
 医師の専従要件ということでございますけれども、この専従要件、今専従で対応できているところは非常にきちんとやられていると思いますものですから、できれば1、2みたいな感じで、専従で医師がいるのと、そうではないのと、2段階で分けて考えることはできないのだろうかと考えます。
 集団コミュニケーション療法、それから障害リハビリテーションについてはもう全く異論ありません。


○土田小委員長
 どうもありがとうございます。


○竹嶋委員
 ちょっと補足をいいですか。私はさっきこの回復期リハでお示しいただいた指標は、これはいいというわけではありませんで、老健もまずこういうことをやってみてほしいというのが一つでして、この回復期リハビリテーションの「論点」の(1)の(3)の下、「質の評価に用いる指標は試行的なものであ」るということですから、これのことを言っているのでしょうが、やはりこの際、この質の評価の指標、今何か2つぐらいあってそれを使っておられるようですね。だけど、これもリハビリの団体、本当に専門家としっかり意見をまぜ合わせながら、この際、この診療報酬改定には間に合わないかもしれないけれども、その指標というのはしっかりしたものをつくっていただくようにぜひ要望したいですね。


○事務局(原医療課長) 
 竹嶋先生は御専門なので、バーサルインデックスとかFIMというような指標がありますますけれども、両方ともよく使われている指標というふうにもちろん聞いております。ただ、若干指標そのものが、運動器向きであるとかあるいは脳血管疾患向きであるとか、ちょっとそれぞれの目的が違っているものですから、全体としてこれを組み合わせるとかいろいろと考えはあったのですけれども、回復期リハビリテーション病棟に使うという目的からいうと、やはり極論は家へ帰れる、日常生活に復帰できるというのが一番大きな目標だろうということで、ではその中で、この今回使った日常生活の自立度というのが一番いい指標ではないかということで、今回これについて細かく調査をさせていただいた。ですから、もちろん並行してこのFIMとかBIについてもあわせてやっていますので、今後それらも含めてさらに検討を深めて、よりブラッシュアップした手法も考えている。そういう意味では今回試行的に導入していきたいというふうに思っています。


○土田小委員長 
 よろしいですか、どうもありがとうございました。


(中略)


対馬委員
 竹嶋委員から、また松浦委員からもお話がありましたけれども、特にリハビリについては、割に患者にもわかりやすいということもありますし、関心も高いということで、リハビリの診療報酬の体系が本当に基本のところが随分変わっているのですね。平成14年以前には複雑か簡易かが基本だったのです。それが14年からは、集団か個別かとなり、18年度からは疾患別という体系となった。2年か4年毎に、ころころ変わっているのです。ですから、先ほど竹嶋委員の方からお話があったとおり、やはり基本のところですから、そこはよく学術団体の意見をしっかり聞いて、特に私ども支払側はそういった療法なりどういったことをやっていけばどれだけ効果があるかということにまたお金をつけたい、こういうことですから、そこはぜひよろしくお願いしたいと思います。


○土田小委員長
 大変重要な指摘だと思います。最近、各国の医療改革でも、リハビリテーションのウエートが非常に上がっておりまして、医療でも介護でも非常に提携しながら進めていくという傾向が見られますが、日本でも両方提携しながら、十分な対応をとっていただきたいと思います。


○西澤委員
 回復期リハのところなのですが、この質の評価というのは、一つの評価の形で、こういう試みはよろしいと思いますが、その後の検討は本当に十分にやっていただきたいと思います。
 この文言ですけれども、一つ「重症」と書いていて、多分これは日常生活機能指標を使うと思うのですが、7対1看護のときに、AとBというのが出てきていて、どちらかというと、重症というのはA票のほうを使って、B票のほうは別な言葉だったと思うので、こっちを「重症」にしてしまうとちょっと混乱が起きるかなということで、文言の使い方を考えていただいたほうがよろしいかと思います。
 それから、「当該病棟から居宅等へ退院」この「居宅等」という中にはどこまで含まれるのか、ちょっと教えていただければと思います。


○事務局(原医療課長)
 基本的には自宅ということを考えているのですけれども、例えばここで絵にしました有料老人ホーム、いわゆる居住系の施設までは含んでいいのではないかと。あと、実はここに老健に行かれた方がいるのですけれども、今の老健は、ある意味中間施設としてリハビリを重視した施設ですので、回復期リハからまた老健に行くのはいかがかなという点、要するに、回復期リハビリテーションでしっかりリハをしてさらに老健に行く、それでリハというのは、何かつながりとしてはスムーズにはこないようなイメージを受けます。要するに、本来回復期リハでしっかりとリハをすれば、そこで自宅へ帰るという目的があるので、老健施設というのは、いわば中間施設としてリハビリ的なものも重視した施設ですので、そこを渡り歩くと言うのは変ですが、そこからそこへ行くというのは本来の姿ではないだろう。だから例えばそれを外すとか、あるいは特別養護老人ホームはどうするか、そのあたりは、今後さらに検討していきたいと思っております。老人保健施設は絶対だめだと今の時点で言っているわけではありませんけれども、それぞれの施設の目的がありますので、それに沿った形で、本来、もともとはやはり自分が住んでいたところだとは思いますけれども、その範囲をどこまでかというのは、もう少し検討していきたいと思います。


○西澤委員
 今の課長の説明で、老健は違うと言ったのですけれども、たしかリハというのは、急性期リハ、回復期リハ、維持期リハということで、これを継続的に行うということになっていたような気がするのですけれども、それから考えると、老健も入ってもいいのではないかなと思いますので、そのあたりはもう一度お考え願えればと思います。


○土田小委員長
 検討課題ですから、決まりましたらまた提示していただきたいと思います。
 それでは、次の議題に移りたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 何度読み返しても腹立たしい。いったい、原厚労相課長は何様のつもりだろう。リハビリテーションに対する無知を平気でさらけだしている。


 この間、当ブログで、回復期リハビリテーション病棟に対する成果主義について繰り返し批判をしてきた。詳しくは、下記エントリーをご覧いただきたい。