茨城県医師会の原中勝征会長、民主党勉強会で講演

 民主党ホームページ、「後期高齢者医療制度勉強会」で制度の問題点を改めて確認 厚労部門会議、より。

2008/05/07
後期高齢者医療制度勉強会」で制度の問題点を改めて確認 厚労部門会議


 民主党厚生労働部門会議は7日、国会内で「後期高齢者医療制度勉強会」を行い、社団法人茨城県医師会の原中勝征会長から後期高齢者医療制度の問題点についてヒアリングするとともに、後期高齢者医療制度におけるリハビリテーションの問題点に関しては、回復期リハビリテーション病棟勤務医の澤田石順医師、済生会栗橋病院副院長の本田宏医師、患者の方から、それぞれの見解を聴取した。


 冒頭、長妻昭『次の内閣』年金担当大臣は挨拶に立ち、後期高齢者医療制度の大きな問題が次々に明らかになっているが、民主党は2年前からその問題点を指摘してきたと言及。そうした民主党の指摘を無視して与党が強行採決した結果としての現制度であると説明した。同時に、そうした前提があるにもかかわらず現時点では厚生労働省OBまでもが「この制度は姥捨て山的になる恐れがある」などと述べている点を取り上げ、自分たちで制度を作っておきながら無責任な発言を繰り返すその姿勢を批判。「論点を明らかにして廃止をして、是正させるよう取り組んでいきたい」と改めて語った。


 山田正彦ネクス厚生労働大臣も同制度を何としても廃止していきたいと表明した。


 「日本の医療の現状を考える」と題して見解を示した原中会長は、後期高齢者医療制度についてまず、「国民皆保険がやがては底をつくという発想で、財政諮問会議のメンバーが毎年2200億円の減額を決めてしまった。そうすると病院はどんどん潰れるし、医療費の問題もある。そうしたなか、これからどんどん増えてくる老人を別枠にしなければいけないというのが、単純な厚生労働省の発想だった」と分析した。


 そのうえで、原中会長は、しかし「後期高齢者」と括られた人たちこそが、日本の国が貧しかった時代からこれまで長い間、保険料を払い続けた方々であったはずが、その人たちを外したこと自体が問題だと指摘。第二に、この制度ができたことで、自分が老人になったら大変だという将来不安が若い世代も含めて広がったことを問題視した。第三に支えあいこそが日本人特有の制度であったはずが、その崩壊を招いた点も指摘。従来は「人に迷惑をかけたくない」といった発想で生活保護申請を控えていた人たちも、「国がこんなことをするのなら」という考えになり、申請者が増加し、国家財政にしわ寄せがくるのではないかとの見方も示した。


 原中会長はまた、制度が厚労省から示された時点で、「みなさん、こんな高齢者いじめの制度が許せますか!」と呼びかける署名用紙を社団法人茨城県医師会として配布し、同制度に反対し、撤廃を求める署名活動を展開したと報告。チラシには「75歳になったらこの制度に強制加入!」「年金から保険料が自動的に天引き!」「保険料を滞納したら保険証とりあげ!」「自由に医療機関を選べなくなります!」「70〜74歳の方も窓口負担1割→2割りに!」などの問題点の指摘が並ぶ。


 さらに原中会長は、同制度に反対の理由として(1)年金よりも人間の価値を差別する制限医療である点、(2)多くの病気を持つ老人の主病は一つと発想は間違っていること、(3)セーフティネットのない社会保障はない__と改めて列挙した。


 厚労省の医療費予測は誤りで、数年にわたって実際の国民医療費は大きく下回ってきた点にも言及した原中会長は、そもそもそうした予測の見直しが必要と指摘。また、「医療費に占める薬剤比率の国際比較」を提示し、医療費の31%が薬剤費である日本の現状にふれ、薬剤費のあり方に関する国としての検討も制度改革前に必要であるとした。さらに、「日本と欧米諸国における医療機器の販売課価格比較」から、ペースメーカーは英国の5倍、フランスやドイツの4倍、米国の2・6倍である数値等を示し、医療機器がかさむ背景についても国としてメスを入れるべきだとした。


 原中会長は「国土交通省は利権を守るが厚労省だけは国民の利権を奪う」と批判するとともに、特別会計は国民の預け金であるとして、それを一般会計として改めれば国民生活の安定は得られると指摘。後期高齢者医療制度の前に、是正すべき点は多々あるとした。


 野党4党は、後期高齢者医療制度廃止で足並みをそろえている。茨城県医師会の原中勝征会長の講演は、民主党の国会戦略に裏づけを与えるものになった。なお、「後期高齢者医療制度におけるリハビリテーションの問題点」に関して、当ブログにもしばしばコメントを寄せていただいている澤田石先生が熱弁をふるわれた。後期高齢者特定入院料や回復期リハビリテーション病棟成果主義の問題を論じたと聞いている。
 後期高齢者医療制度廃止に向けた取組みが具体化しようとしている。