後期高齢者診療料届け出医療機関は全体の9%弱か?

 産経新聞かかりつけ主治医制度の届け出医療機関は2割 後期高齢者医療制度、より。

かかりつけ主治医制度の届け出医療機関は2割 後期高齢者医療制度


2008.5.6 00:07


 75歳以上が対象の後期高齢者医療制度長寿医療制度)の柱である「かかりつけ主治医制度」に届け出た医療機関が、4月時点で全内科開業医の約2割にとどまっていることが産経新聞の全国調査で分かった。多くの地方医師会が「複数の慢性病を持つ患者が、本当に必要な治療を受けられなくなる」と届け出自粛を呼びかけているためだ。厚生労働省は「生活全体を支える診療を行う」と大々的にPRしてきたが、またも出ばなをくじかれた形だ。
 調査によると、4月の締め切り期限だった同月14日までに社会保険事務局に届け出た医療機関は、回答がなかった茨城、福井、広島、福岡の4県を除き、43都道府県で約7900カ所(概数も含む)だった。
 青森県では届け出がゼロで、主治医として期待される内科開業医(平成17年10月現在3万7356カ所)のうち約2割しか届け出をしていない計算だ。
 都道府県別では、内科開業医の過半数が届け出をした計算となるのは鹿児島など4県。都市部でも兵庫は1割以下だった。
 届け出が多かったのは、開業医数が多い東京約1300、大阪約700、神奈川約550など。青森をはじめ、秋田、沖縄、山形などの県では、主治医制度の利用が困難な状況となっていることが分かった。
 主治医の届け出をしていない医療機関で受診すると、患者は定額払いの医療を利用できず、従来通り出来高払いとなる。

 全国的に届け出が低調なのは、30近くの府県医師会で、主治医の届け出や後期高齢者診療料の請求を見合わせるよう会員医師に求める動きが出ているためだ。
 患者が複数の慢性病を抱える場合、主な病気を診療する主治医だけが診療報酬「後期高齢者診療料」を請求できるため、医師側から「主な病気が1つとは限らず、早く請求した医療機関が主治医として認められるのでは医療機関の連携を損なう」(栃木県医師会)との批判が相次いでいる。
 検査が多くなるほど主治医の持ち出しが増えるとの懸念も届け出を鈍らせている。例えば、患者の容体が急変した場合、主治医はCT(コンピューター断層撮影)など5500円以上の検査料なら別途請求できるが、レントゲンの単純撮影といった診療報酬の安い検査は定額払いの後期高齢者診療料の中でまかなわなければならないためだ。
 厚労省は届け出が低調なことについて「制度が導入されたばかりで、様子見している医師が多いだけ」と静観の構えだ。ただ、「主治医制度で従来の診療が制限されることはなく、主治医でも費用がかかる場合に出来高払いの診療をするのは可能」として、制度の誤解を解くよう医療機関にPRを進めていく考えだ。

 ■かかりつけ主治医制度 75歳以上の高齢者は、糖尿病や高血圧といった慢性病が多いことから、患者が指定する1人の「かかりつけ主治医」が、外来から入院まで一貫して治療にかかわる仕組み。「高齢者担当医制度」が正式名称。窓口自己負担が1割の人の場合、外来では月600円の「後期高齢者診療料」を支払うと(再診料や注射代などは別途必要)、主治医が年間診療計画を作成し、患者は追加料金なしで月内に何度でも検査や処置を受けられる。医師が主治医になるためには、認知症など高齢者医療に関する研修を受講し、社会保険事務局に届け出なければならない。


 データの誤りを正す。
 厚生労働省:平成17年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況、統計表8 診療科目別にみた一般診療所数・歯科診療所数の年次推移(重複計上)では、平成17年10月1日現在で、一般診療所数は97,442ヶ所、うち内科を標榜しているのは63,286ヶ所である。「主治医として期待される内科開業医(平成17年10月現在3万7356カ所)」とは乖離がある。「43都道府県で約7900カ所(概数も含む)」となると、内科標榜診療所の約12.5%、全診療所の約8.1%となる。


 「届け出が多かったのは、開業医数が多い東京約1300、大阪約700、神奈川約550など」とのことだが、統計表9 都道府県−15大都市・中核市(再掲)別にみた施設数及び人口10万対施設数をもとに届出数の占める割合を計算してみた。一般診療所数(届出数%)は、それぞれ、東京12,269(約10.6%)、大阪8,116(約8.6%)、神奈川6,053(約9.1%)となる。飛び抜けて比率が高い訳ではない。


 回答がなかった4県の診療所数は、それぞれ、茨城1,661、福井576、広島2,602、福岡4,374ヶ所となっている。このうち茨城は約1%しか届け出ていなかったことが既に分かっている(参照、後期高齢者診療料登録診療所は1%(茨城))。おそらく、全国で後期高齢者診療料届出数は8,500ヶ所程度(9%弱)に留まっているのではないかと推測する。いずれにせよ、厚労省の期待に反した結果になっている。