福岡など10道県で重度障害者に対する医療費助成が後退

 毎日新聞後期高齢者医療制度:10道県、重度障害者に「強制」 3418人が加入拒否、より。

後期高齢者医療制度:10道県、重度障害者に「強制」 3418人が加入拒否


 後期高齢者医療制度への加入が任意となっている65-74歳の重度障害者に対し、10道県が制度加入を医療費助成継続の条件にしたため、計3418人が拒否していることが分かった。加入した場合に保険料負担が増えるためとみられる。自治体にとっては同制度加入者の方が財政負担が軽くてすむが、一部の障害者は負担増か医療費助成打ち切りかの選択を迫られている。


 毎日新聞の調べでは、10道県と加入拒否者数は▽福岡1423人▽北海道666人▽愛知318人▽青森280人▽茨城275人▽栃木180人▽山口86人▽富山70人▽山形、徳島各60人。


 障害者への医療費助成は全都道府県が実施し、一定の障害があれば、都道府県と市町村が折半するなどし本人負担をなくしたり軽減したりしている。その際の自治体の負担は、後期高齢者医療制度の加入者は1割だが、国民健康保険や企業の健康保険なら65-69歳で3割、70-74歳で2割(08年度は1割)。10道県は、市町村も含めた自治体の持ち出しを減らそうと、同制度加入を助成の条件とした。


 制度加入を拒否した人の多くは、障害を抱えながら職を持ち家族を扶養しているとみられる。会社の健康保険に入って家族を養っている人などは、同制度に移れば、自分以外の家族全員が個別の国民健康保険などに加入し、それぞれの保険料を支払わなければならなくなるため、負担が増えることがある。


 10道県の多くは「医療費負担と新制度の保険料負担を比べた本人の判断」として、特別な対応をしていない。厚生労働省は指導などはしていないが、実態の把握を進めている。【野倉恵、秋山信一】


 ◇受診自粛の恐れも‐‐北野誠一・東洋大教授(障害者福祉論)の話
 10道県の制度運用は、自治体の財政力や方針の違いにより障害者の生活基盤が揺らぎかねないことを意味している。保険料を負担するか助成を受けられなくなるリスクを取るか。選択を迫られた障害者の多くは、ぎりぎりで自立し、家族も養う人たちだろう。助成がなくなれば、受診の自粛も心配される。

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 ■ことば

 ◇後期高齢者医療制度と65-74歳の重度障害者
 すべての75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度には、一定の障害を持つ65-74歳の人も、自治体の認定を受け任意加入できる。旧老人保健制度でも同様で、同制度下では保険料負担がなかったため、65-74歳の重度障害者の多くも加入していた。後期高齢者医療制度では、これらの障害者に新たな保険料負担が生じるため、通常は、新たな保険料負担とこれまで通りの保険料を比較して、同制度に入るかどうかを選ぶことができる。

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 ◇重度障害者(65-74歳)の加入状況
        加入者  拒否者
北海道   37743  666
青森    11637  280
山形     7944   60
茨城    12422  275
栃木     8900  180
富山    約8000   70
愛知    41200  318
徳島     4998   60
山口    13287   86
福岡    31071 1423
…………………………

 計  約177202 3418

毎日新聞 2008年5月6日 東京朝刊


 当ブログのエントリー、後期高齢者医療制度- 障害者は65歳から“強制加入”などで、重度障害者が後期高齢者医療制度のため、医療費助成制度を受けられなくなる危険性を指摘した。
 上記表をみると、福岡県の拒否率が著しく高い。エントリー、医療費が上がると保険料があがるという「制度の理念」でもとりあげたが、福岡県は全国一保険料が高く、かつ減免を全く考えていない。その福岡県が、後期高齢者に該当する重度障害者の医療費助成の条件として、後期高齢者医療制度の加入を義務づけた。医療費助成と保険料をてんびんにかけた結果、対象者の4.6%1,423名もの拒否者を産み出した。この1,423名という数字は、全国の拒否者の実に41.6%に達する。
 福岡など10都県は、高齢化進行に伴い後期高齢者医療制度保険料の高騰を放置すると、重度障害者に犠牲が及ぶということを、「先進的に」示してくれている。