地域連携クリティカルパスの現状


 地域連携クリティカルパスについて検討した。中医協診療報酬基本問題小委員会平成19年10月31日資料内に地域医療についてという資料がある。その中の資料(診-3-3)に詳しいデータがある。概要を記す。

# 平成18年度診療報酬改定結果検証に係る調査 地域連携診療計画料算定保険医療機関における連携体制等の状況調査結果概要(速報)


1.目的
・ 地域連携クリティカルパス導入による平均在院日数の変化を把握
・ 医療機関の連携状況、連携上の課題を把握
・ 大腿骨頚部骨折以外の地域連携クリティカルパスの対象疾患を把握


2.調査対象
・ 平成18年7月1日現在で地域連携診療計画管理料を算定している78施設、及び地域連携診療計画退院時指導料を算定している222施設全てを対象とした。


3.調査方法
・ 自記式調査票の郵送発送・回収
・ 調査実施時期は7月


4.調査項目
 略


5.結果概要
(1)回収の状況、(2)(3)施設属性

施設 対象施設数 有効回収数 回収率 平均病床規模
計画管理病院   78   51  65.4%   467.2床
連携医療機関   222   110  49.5%   151.2床


(4)地域連携診療計画管理料、地域連携診療計画退院時指導料の算定患者
・ 地域連携診療計画管理料算定患者数(N=34施設)

1施設当り平均患者数
大腿骨頸部骨折による入院患者数  112.5
地域連携診療計画管理料を算定した患者数  42.2(37.5%)


・ 地域連携診療計画退院時指導料の算定患者(N=42施設)

大腿骨頸部骨折による入院患者数  15.0
地域連携診療計画管理料を算定した患者数  3.4(22.3%)


(5)地域連携クリティカルパス上の入院期間(N=51施設)
・ 連携先も含めた総入院期間を設定 49.0% 平均71.4日
・ 自院の入院期間のみを設定 41.2% 平均18.3日


(6)退院基準の作成状況
・ 計画管理病院(N=51施設) 82.4%
・ 連携先医療機関(N=110施設) 21.8%


(7)大腿骨頸部骨折患者の平均在院日数の変化

平成17年度 平成18年度
計画管理病院(N=33施設)   38.2日   33.0日
連携医療機関(N=53施設)   64.1日   62.7日


(8)地域連携クリティカルパスの対象患者
 骨折がもっとも多く、次に脳卒中が多かった。


(9)地域連携クリティカルパスに係る書式の有無
1)計画管理病院における統一書式の有無(N=51施設)
・ 医療者用パス 94.1%
・ 患者用パス 98.0%

2)連携医療機関における退院時の患者用説明資料の有無(N=110施設)
・ あり35.5%


(10)計画管理病院ー連携医療機関の会合の開催状況
1)計画管理病院(N=41施設) 平均4.1回 
 なお、計画管理病院1施設当たり平均7.4施設と連携。
2)連携管理病院(N=102施設) 平均3.5回


(11)地域連携パス運用上の課題、(12)今後の方針
 略


 厚労省は、地域連携クリティカルパス導入により、総在院日数が短縮したことを評価している。また、計画管理病院と連携医療機関の定期的な会合が開催されていることに関し、高い評価を与えている。そして、診療報酬上定めのない脳卒中においても地域連携クリティカルパスが作成されていること、脳卒中自体の重要性を考慮し、大腿骨頸部骨折に引き続き、「装置長期間の短縮を目的とした」地域連携クリティカルパスの対象疾患とすることにした。さらに、地域連携クリティカルパスにおいて「転院基準」、「退院基準」を明確にし、患者に提示することにした。さらに退院時日常生活機能評価を明記することになった(参照、中医協答申−地域連携診療計画の評価の拡大と見直しについて)。


 計画管理病院(急性期中心の病院)と連携医療機関(回復期リハビリテーション病棟など)との機能分化と連携推進は重要課題である。定期的に会合を行い、顔の見える連携を進めること、転院基準や退院基準を明確にし、統一した治療目標を決定することは、患者の利益に通じる。効率の良い医療連携を行うことで、結果として在院日数も短縮する可能性がある。
 今回の改定で、地域連携クリティカルパス脳卒中にも拡大され、回復期リハビリテーション病棟でも地域連携診療計画退院時指導料を算定できるようになった。積極的に評価できる数少ない改定の一つである。