医師不足問題に対する福田首相の答弁

 医師不足問題に関し、福田首相の答弁があった。

政策:診療科の偏在、是正必要‐‐福田首相


 福田康夫首相は4日の参院予算委員会で、医師不足問題について「諸外国の中でも医師の数が少ないのは一目瞭然(りょうぜん)だ。医師が(医師不足が深刻なところではない)他の診療科に行ってしまう状況があり、是正しなければいけない」と述べ、診療科ごとの偏在を是正する必要があるとの認識を示した。


毎日新聞 2008年2月5日 東京朝刊


 「諸外国の中でも医師の数が少ないのは一目瞭然(りょうぜん)だ。」と正しい認識をしながら、「医師が(医師不足が深刻なところではない)他の診療科に行ってしまう状況があり、是正しなければいけない」と続けるのは首尾一貫しない。


 第169回国会における福田内閣総理大臣施政方針演説 平成20年1月18日を見ると、医師不足問題について、次のように述べている。

 今、医療現場は様々な問題に直面していますが、国民の皆様が安心できるように、患者本位の医療体制を構築します。勤務医の過重な労働環境や、産婦人科・小児科の医師不足の問題に対応し、診療報酬の改定や大学の医学部の定員増を実施するとともに、医療事故の原因究明制度の検討を進め、事故の再発防止と併せ、医師が安心して医療に取り組めるようにします。ITを活用して救急情報を関係機関と共有するなど、救急医療の体制を整備します。


 文部科学省のホームページ「緊急医師確保対策」に基づく平成20年度からの医学部の収容定員増に関する届出状況(公立大学)について 平成19年12月13日内に、医師養成増に関する詳しい条件が記載されている。

緊急医師確保対策における医学部定員増の概要

  • 都道府県において、平成21年度からの最大9年間(公立大学は平成20年度からの10年間)に限り、最大5人(北海道は15人)の増員を容認。
  • 医師養成総数の少ない県(和歌山県和歌山県立医科大学、神奈川県−横浜市立大学)において、平成20年度からの20人までの恒久的な増員を容認。


 概算すると約10年間に現在より2,700〜2,800名増となる。OECD基準と比べ、10万人以上足りないと言われている現状を考えると、焼け石に水としか言いようがない。


 医師養成数増に関する都道府県の反応が毎日新聞の記事に載っている。

医師不足:国の緊急対策に都道府県は期待薄 毎日新聞調査


 国の緊急医師確保対策の目玉で、来年度から認められる大学医学部の臨時定員増(最大10年、各都府県5人、北海道15人)によって、医師不足が完全に解消すると考える都道府県はほとんどないことが、毎日新聞の調査で分かった。国は「地域や診療科によっては医師が不足しているが、全体では足りている」とするが、医師が充足していると答えた都道府県はゼロで、国の医師数抑制策の転換を求める声も目立った。


 調査は11月、都道府県の医師確保対策担当課を対象に実施し、現状や取り組み、国への要望などを聞いた。


 都道府県内の医師の充足状況は、42都道府県が「不足」と答え、「分からない」などが5県だった。日本全体の医師数も、国と同様の「医師の偏在」との見解を示したのは5府県しかなかった。


 臨時定員増で医師不足が解消できるかは、23都府県が「できない」と答え、15道府県が「分からない」など。9県は「できる」と答えたが、うち8県は「一部は」「ある程度は」などの条件付きで、根本的な解消策とはとらえていなかった。


 国は5月、勤務医の労働環境整備など6項目の緊急医師確保対策を打ち出し、来年度予算案にも盛り込まれたが、抜本的な対策を求める声が目立つ。


 秋田県は「医療の高度化や安全対策など医師の業務は飛躍的に増えており、今回の定員増では不十分」と、医学部定員削減を決めた97年の閣議決定の見直しを求めた。日本の人口あたりの医師数は経済協力開発機構OECD)加盟国中最低レベル。医師数が最も多い東京都ですら「諸外国との比較を含め、必要な医師数を議論する必要がある」とした。


 妊婦の搬送を巡る問題が相次いだ奈良県は国に望む対策として、▽大学医学部の定員増▽臨床研修医は都道府県ごとに定員を設ける▽産科医のリスク軽減措置として、無過失補償制度と第三者機関による死因究明制度の創設‐‐を挙げた。【まとめ・鯨岡秀紀】


毎日新聞 2007年12月25日 2時30分


 「諸外国の中でも医師の数が少ないのは一目瞭然(りょうぜん)だ。」という認識を持っているのなら、医師養成数を思い切って増やすべきである。全国にある医学部全てで、定員を10〜15名増やすだけで毎年800〜1,200名の増員は可能である。