舛添厚労相の発言

 舛添厚労相が、長野県飯田市の対話集会で発言した内容がネット上で話題となっています。


 まず、対話集会の全体像を知るために、南信州サイバーニュース(2008年1月22日)舛添厚労大臣と意見交換から引用します。

 舛添要一厚生労働大臣は19日、飯田市追手町の飯田合同庁舎で開かれた国民対話で医師確保について意見交換した。同大臣は「目先の問題も長期的なことも車の両輪でやる。問題は山ほどあるが、世界一長生きできる国を守っていきたい」と語った。


 はじめに、長野県を訪れた理由を「予防医療が優れていて高齢者医療のコストが非常に低い。モデルケースになる」と説明。東京大学の講師時代には同市千代で下宿をしたこともあるといい、「飯田の千代は第二のふるさと」と紹介した。


 国民対話では、厚労省の取り組みについて述べた後、参加者の意見質問に答えた。


 参加者は「無過失保障制度を国として考えてほしい」、「公立病院への(産婦人科に対する)補助金をなくさないで」と要望。舛添大臣は「無過失保障制度は病院や医者に掛け金を払ってもらいどんどん拡大したい」と答えた。


 下伊那赤十字病院の産科存続運動をしてきた女性は、「4月から日赤病院での出産が絶たれてしまう。今も経験豊かな助産師さんが老人介護をしている。この力を生かせないか」と発言。舛添大臣は「対策のスピードを上げないといけない。総理は小児科不足にも問題意識を持っている。内閣全体で緊急に取り上げたい」とした。


 このほか「医師を2000〜3000人規模で増やすことはできないのか」、「地域医療を支えているのは市立病院だけではない。民間は診療報酬だけでやっている」という指摘も。舛添大臣は「長期的にどうするか。緊急に医師倍増計画をやったとしたら、負担は国民が背負うことになる。数だけでなく、なぜ医師が忙しいのか、医師が医療行為に専念できる環境を考えながら、長期的な医療ビジョンをつくっていきたい」と回答した。


 産科医の男性は、基幹病院が次々と閉鎖している現状を挙げ、「今までは大学が(医師を)うまく管理していたが、ここ数年できなくなり全国の産科がなくなっている」と指摘。「厚労省の対策は10年後に結果が出るものばかり。私たちはこの4月をどう乗り越えるかを考えている」と訴えた。
 舛添大臣は厚労省の対策を改めて示した上で「目の前をどうするかは非常に深刻。しかし国が命令して北海道から飯田へ来させるような強制力はない。公立病院だけでなく、開業医の皆さんとの連携が必要」とした。


 さらに「後期研修医制度を元に戻しては」という意見については、「医療サービスをどう考えるか、国民の目線で考えることが一番。外国人に視察させて恥ずかしいのは大学と病院です。(患者に対し)車やテレビを買うときと同じぐらいの情報提供は必要。医療提供者もしっかりやっていただかなくては」と指摘した。


 終了後には記者会見が開かれ、舛添大臣は「次の閣議で総理とも相談し、政府全体として緊急事態の認識で(医師確保の)施策を考えたい」と語った。


 話題となっているのは、次の発言です。「しんぶん赤旗」(2008年1月20日「医者を増やすとホームレスに」/舛添厚労相より。

 舛添要一厚生労働相は十九日、長野県飯田市での国民対話集会で、医師不足問題について、「医者は十年後にしか育たない。仮に、いま足りない医師をばーんと増やしたら、十年たったら余って医者のホームレスが生まれることになる」などと述べました。


 参加者から出された「地域から産科医がいなくなってしまう」「医師の過酷な勤務をなんとかしてほしい」という要望に答えるなかで、発言したもの。日本の人口千人当たりの医師数はOECD経済協力開発機構)加盟三十カ国のなかで二十七位という低い水準にあり、国際的にみて、十二万-十四万人も足りないのが現実です。舛添氏の発言は、厚労行政の責任者としての資格を疑わせるものです。


 もう一つ。MSN産経ニュース(2008年1月19日)医師確保で追加対策より。

 舛添要一厚生労働相は19日、視察先の長野県飯田市で記者会見し、地方の医師不足について「緊急事態宣言をしないといけないような状況だ。首相と相談し、追加施策を早急に取りまとめたい」と述べ、新たな医師確保対策を検討する考えを表明した。
 その上で「特に産科医はどの地域に行っても深刻な問題だ」として、優先的に確保に努める必要があると指摘した。
 新人医師が研修先を選べるようになったことが地方の医師不足を招いたとして、臨床研修制度の見直しを求める声があることについては「大事な命を全部、見習いに預けていいのか」と否定的な見方を示した。
 政府は昨年5月、国による医師の緊急派遣などを柱とする緊急医師確保対策を決定している。


 「飯田の千代は第二のふるさと」と言うだけあって、サービスたっぷりの対話集会だったようです。それにしても、「仮に、いま足りない医師をばーんと増やしたら、十年たったら余って医者のホームレスが生まれることになる」とか、「大事な命を全部、見習いに預けていいのか」などという発言をみる限り、医師に対する敬意は全く感じません。単なる失言ではなく、本音ととらえて良いでしょう。また、「無過失保障制度は病院や医者に掛け金を払ってもらいどんどん拡大したい」という発言も見逃せないものです。国は公費をだすつもりは全くないようです。


 医療崩壊は、医療費亡国論という判断ミスと低医療費政策・医師抑制という政策の誤りによって生じたものです。それにも関わらず、未だに、公的医療費を増やさず、医師不足対策もとらずに、このまま放置するつもりのようです。医師が誤診と医療過誤を繰り返していれば、医道審議会から免許を剥奪されます。厚労相は任期が終われば、後は責任はありません。気楽なものです。無責任な医療行政の積み重ねが現在の状況を生み出しています。