「医療費増額が医を荒廃から救う」

 CBニュース「医療費増額が医を荒廃から救う」(2008年1月15日)という記事が配信された。

 -医療費亡国論-の呪縛から脱却して「医療による立国へ」−。医療が経済にもたらす波及効果や雇用創出効果は大きく、EU欧州連合)のように医療の多様な分野に積極的に投資することが経済の活性化につながり、国を豊かにして国民を幸せにする。この「医療立国論」が今、全国の医療関係者らの注目を集めている。日本の医療制度が崩壊の危機に瀕する中、医療費亡国論に基づく政府の低医療費政策に対し、逆に医療費を増額させることが医療を荒廃から救うという論陣だ。これを唱えるのは「医療立国論−崩壊する医療制度に歯止めをかける!」を著した帝京大学名誉教授の大村昭人氏(同大学医療技術学部臨床検査科主任教授)で、このほど東京都内で講演した。


 大村昭人氏が、1月12日夜、東京保険医協会の病院有床診部が開いた医療政策学習会で講演した内容がまとめられている。特に興味深かったのは後半部分である。

医療投資は大きな波及効果


 さらに、大村氏は「EUの国々では、医療が経済活性化の要であることが、よく認識されている」と紹介。ヨーロピアン・コミッションの05年8月のレポートによると、EU諸国では医療への投資が経済成長率の16〜27%を占めている。これをEU15か国に限ると、医療制度の経済効果はGDPの7%に相当、金融の約5%を上回り、「GDPの7%という数字を、もし日本に当てはめた場合、年間35兆円ほどGDPを押し上げることになる」と強調した。
 そのうえで「EU諸国では、医療・福祉は国の負債ではなく、経済発展の大きな原動力であるという認識が強く、雇用拡大につながると考えられている」と指摘。多くの国々が経済の国際競争力で高い位置を占め、EU25か国での医療に関連する分野で働く人の割合が全労働人口の9.3%となっていることも示した。


 このほか、大村氏は、日本でも医療や介護など社会福祉の経済総波及効果は高いことを指摘。「年金や医療・介護という社会のセーフティネットを整備することは、国民が安心して経済活動や社会活動に専念するために重要。医療や介護への波及効果や雇用創出効果は非常に大きく、医療を負債と考えるのではなく、EUの国々のように医療の多様な分野に積極的に投資することで、経済をさらに活性化する。医療費亡国論から脱却し、医療への投資を実施することが『医療立国』になる。医療に金を掛けることは亡国ではなく、国を豊かにして国民を幸せにする道」と締めくくった。


 大村昭人氏の「医療立国論−崩壊する医療制度に歯止めをかける!」は2007年5月に日刊工業新聞社から出版されている。実は、この本自体の存在を知らなかった。近日中に購入することにする。