兵庫県但馬地域での医療提供体制再編の問題点

 伊関友伸先生のブログで、Japan Medicine 記者の視点 「医師のモチベーションの考慮も必要 公立病院改革」が紹介されている。再編・ネットワーク化に伴って生じた問題点について、記載されている。一部を引用する。

◎「再編される側」は異論

 この案の決定に先立ち、兵庫県北部の但馬地域では医師不足対策として、2次医療圏内に9施設ある公立病院の医療提供体制を10月に「再編」した。350床以上の2病院は急性期医療を、残りの7病院が慢性期医療や外来機能を担う。

 7病院のうち、100床規模以下の病院は50床程度の運用に転換。50床規模の病院は35床に縮小したほか、常勤医を3人にまで減らし、その人員を100床規模以上の病院に集約した。

 だが、再編された側は納得していない。医師が削減された公立豊岡病院組合立梁瀬病院(現朝来梁瀬医療センター)の木山佳明院長は、「地域事情を考慮しない再編は非常に問題がある」と異論を唱える。

 同病院はこれまで、医師4人で当直を回し、年間2700人の時間外救急患者の診療に当たってきた。地域住民の健康管理や予防にも力を入れており、蓄積してきた健診データによって患者の肺がんを早期に発見した実績もある。

 経営的にも順調だった。公立豊岡病院組合事業会計決算によると、同病院の2006年度収益的収支の差し引きは5700万円の利益。病床利用率も90%を超えた。

 しかし、再編によって常勤医5人のうち内科医2人が転出。残りの内科医も再編後の診療体制を不安視して退職したため外科医2人だけになり、時間外の診療受け入れを中止せざるを得なくなった。

 目の前の患者を助けるという救急医療は、いうまでもなく医師の基本だ。それだけに木山院長は「助けを求められても、それを断るのがつらい」と話す。

 同僚医師や看護師も同様の志で地域医療に取り組んできただけに、患者の力になれない状況に直面して仕事へのモチベーションが下がる一方だという。「再開したい気持ちはやまやまだが、2人では体がつぶれてしまう」と、木山院長はやりきれない心境を打ち明ける。

 また再編に伴って、内科の入院も制限した。これによって財政的に苦しくなることが予想されるため、大きく赤字に転落することも覚悟しているという。


 兵庫県但馬地域での事例をみると、再編・ネットワーク化は、まかり間違うと医療崩壊を加速化させる劇薬になってしまうことがわかる。